2020 Fiscal Year Research-status Report
脳卒中発症リスク要因としての長期避難生活が及ぼす影響に関する疫学研究
Project/Area Number |
19K19463
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Research Institution | Fukushima Medical University |
Principal Investigator |
中野 裕紀 福島県立医科大学, 医学部, 講師 (10736721)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 発症登録 / 循環器疾患 / 脳卒中 |
Outline of Annual Research Achievements |
避難区域住民における脳卒中発症の推移、地域差の検討を行うため、震災や避難の影響を検討するため、コントロール群として福島県の中通り地域の9医療機関での2018年1月~12月までの発症について採録を行い、2367件(2013年:2388件)を登録対象とした。初発再発での比較では、初発1762件、再発567件、不明15件で、2013年と比較して有意な差はなかった。医師による判定後の脳卒中の内訳では、脳梗塞1668件、脳内出血515件、くも膜下出血161件で、2013年と比較して有意な差はなかった。脳梗塞の病型別分類では、アテローム血栓性495件、心源性梗塞513件、ラクナ梗塞439件で、アテローム血栓性脳梗塞と心原性脳塞栓の増加、ラクナ梗塞の減少がみられた。2013年との比較ではそれぞれ有意な差が見られた。引き続き、浜通り、会津地域でも採録を継続することで、原発事故や避難の影響、避難の影響と脳卒中発症との関連を明らかにしていく。新型コロナウイルス感染症による影響から、医療機関での採録作業について、短縮、医師による判定、データクリーニングの効率化、データ精度の向上を目的として採録の電子化に取り組んだ。新型コロナ下で、スタッフや医師の移動制限、医療機関からの作業時間短縮の要望が出た。そこで、採録用ノートパソコンにファイルメーカーを用いた「電子登録票」を作成した。採録の電子化による運用の大きなメリットとして、①発症登録票への転記作業の(手書きをなくすことによる)省力化。②脳CT・MRIのスケッチのタブレット使用による電子入力化(スキャン作業の省力化)。③採録内容の論理チェックによる誤入力の防止、データ精度の向上。④発症登録データベースへの手入力作業の軽減。⑤データクリーニング作業の省力化・効率化。⑥「遠隔」による医師の症例判定の実施が可能となる。の6点が挙げられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
2018年1月1日から平成30年12月31日を対象期間とした発症登録の遡り調査については、当初令和2年4月から開始する予定であったが、新型コロナウイルスによる感染症の影響で、採録対象の医療機関においての、打合せ等の調整の延期や、採録開始時期の延期の要望があり、各医療機関と個別で調整、検討を重ねてきた。
一部医療機関においては採録を開始できたが、昨年度の遅れを取り戻すには至っておらず、研究期間を1年延長するにいたった。採録の電子化など、効率化とデータ精度の向上についての成果は出ており、鋭意採録を進めている。医療機関においてクラスターが発生するなどで、予断はゆるさない状況ではあるが、引き続き協力医療機関との調整をすすめ、発症データの収集が迅速に進むようにつとめたい。
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Strategy for Future Research Activity |
引き続き平成30年1月1日から平成30年12月31日までを対象とした発症登録を継続していくが、若干の遅れがあることから、、研究期間を1年延長するにいたったが、効率化と迅速化を図り、対処していく。一部地域については、平成25年の採録データ他の調査結果との紐づけが可能となってきており、より詳細に地域比較、病型や病態による比較を進めていく。
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Causes of Carryover |
新型コロナによる影響で、採録のかかる経費、学会発表等の成果報告に関する経費の計上が少なかった。一方で、採録の電子化のためのシステム開発費用を計上した。次年度は、研究成果の発表、論文化に加え、採録システム及びデータ管理システムの拡充に使用する。
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