2020 Fiscal Year Research-status Report
質量分析計を用いた炎症細胞における脂質酸化物の検出に関する研究
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19K19480
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Research Institution | Chiba University |
Principal Investigator |
星岡 佑美 千葉大学, 大学院医学研究院, 助教 (30748372)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 法医学 / 脂質酸化 / 炎症 / 質量分析 |
Outline of Annual Research Achievements |
当研究は、細菌等の異物処理に関与する好中球顆粒の一つであるミエロペルオキシダーゼによる、リン脂質の一種であるホスファチジルコリンのクロロヒドリン化に着目し、ホスファチジルコリンのクロロヒドリン体が法医解剖における感染症/好中球浸潤のバイオマーカーとなりうるかを明らかにすることを目的としている。 昨年度、ミエロペルオキシダーゼにより生体内で産生されるとされる次亜塩素酸をホスファチジルコリンに添加することにより、ホスファチジルコリンのクロロヒドリン体や酸化体、過酸化体などが検出されることを確認した。これについて、ミエロペルオキシダーゼを用い、同様の産物が産生されるかどうかの検討を行ったが、既報に準じた方法を用いているものの、同様の産物は検出されなかった。酵素を活性化させる条件が不足しているのかなど、現時点で原因は不明であり、次年度も引き続いて検討する必要がある。 次に、法医解剖事例から採取したサンプルから抽出した脂質から、ホスファチジルコリンの塩素化物や酸化物の検出を試みた。このうち膿瘍については、一部の膿瘍から酸化ホスファチジルコリンが検出された。酸化ホスファチジルコリンの検出の有無についてその要因を検討したところ、検出された事例はいずれも血液生化学検査結果から敗血症を来していたと診断し得る事例であったことから、高度の炎症において検出感度以上の酸化ホスファチジルコリンが産生されることが示唆された。次年度は敗血症を来していると推定される解剖事例において、膿瘍以外のサンプルも採取し酸化物等の検出を試みる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
ミエロペルオキシダーゼを用いた反応が既報の通りに起こらず、条件検討に時間がかかっているため。 また法医解剖事例からのサンプル採取についても、適切な事例が期間内において少なく、十分な事例数が集められていないため。
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Strategy for Future Research Activity |
次亜塩素酸とホスファチジルコリンの反応物の同定については、引き続き構造解析を進めるほか、反応液のpH条件を変化させ、生体内での様々な反応状況と合わせた検討も行う。またミエロペルオキシダーゼを用いた反応については、文献の再調査を含め反応条件の検討を引き続き行い、目的とする産物が検出され次第、濃度やpHなどの反応条件を振り、クロロヒドリン体などが産生される条件を検討する。 法医解剖サンプルについては、当初対象と考えていた膿瘍や心筋に加え、敗血症を来していると推定される事例において肺など他の臓器の採取も行い、引き続き採取、分析を行う。また敗血症と酸化物産生の関連について文献検索も含め検討する。 また状況に応じLC/QTOF-MSを用いた脂質分析の条件検討を行う可能性がある。
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Causes of Carryover |
昨年度に質量分析で得られたデータを処理するためのソフトウェアの購入を予定していたが、既に研究室内に設置されているソフトウェアと、オンライン上に公開されているフリーソフトウェアを用いることで、本研究に十分なデータ処理が行えることがわかったため、ソフトウェアの購入を見送った。一方で、研究室内に設置されているソフトウェアの更新と、このソフトウェア運用に必要十分なスペックのパソコン購入を行う必要性があったため、昨年度に使用予定であったソフトウェアの購入費用を、本年度これらの購入のために使用した。しかし当初計画していたソフトウェア購入費用よりも安価に購入可能であったため、余剰額が生じた。次年度に試薬やカラム、消耗品等の購入に充てる。
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