2021 Fiscal Year Research-status Report
質量分析計を用いた炎症細胞における脂質酸化物の検出に関する研究
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19K19480
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Research Institution | Chiba University |
Principal Investigator |
星岡 佑美 千葉大学, 大学院医学研究院, 助教 (30748372)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 法医学 / 脂質酸化 / 炎症 / 質量分析 |
Outline of Annual Research Achievements |
当研究は、細菌等の異物処理に関与する好中球顆粒の一つであるミエロペルオキシダーゼによる、リン脂質の一種であるホスファチジルコリンのクロロヒドリン化に着目し、ホスファチジルコリンのクロロヒドリン体が法医解剖における感染症/好中球浸潤のバイオマーカーとなりうるかを明らかにすることを目的としている。 これまで、ミエロペルオキシダーゼにより生体内で産生されるとされる次亜塩素酸をホスファチジルコリンに添加することにより、ホスファチジルコリンのクロロヒドリン体や酸化体、過酸化体などが検出されることを確認している。これらの産生条件の推定のため、ミエロペルオキシダーゼを用い、同様の産物が産生されるかどうかの検討を行っているが、同様の産物の検出は困難であった。次年度の研究の進行具合によって、再度条件検討を継続するかどうか検討する。 次に、法医解剖事例から採取したサンプルから抽出した脂質から、ホスファチジルコリンの塩素化物や酸化物の検出を試みた。このうち一部の膿瘍から酸化ホスファチジルコリンが検出され、これらは敗血症が疑われる事例であったことから、高度の炎症において検出感度以上の酸化ホスファチジルコリンが産生される可能性が示唆された。このため、本年度は敗血症その他炎症が疑われる解剖事例の検体採取を進めたが、該当事例が少なく、また例えば肺炎が疑われる事例では新型コロナウイルス肺炎が鑑別に挙がるため、検体を安全に採取し、実験室内で取り扱う準備が不十分であったため、事例数の確保が困難であった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
ミエロペルオキシダーゼを用いた反応が既報のとおりに起こらず、条件検討に時間がかかったため。 また法医解剖事例からの検体採取についても、適切な事例が期間内において少なく、また年度の前半は新型コロナウイルス感染症に対応した解剖、検体の取り扱いの整備が不十分であったため、十分な事例数が集められていないため。
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Strategy for Future Research Activity |
次亜塩素酸とホスファチジルコリンの反応物の同定については、引き続き構造解析を進めるほか、反応液のpH条件変化による産物の同定と生体内条件との検討を引き続き行う。ミエロペルオキシダーゼを用いた反応については、一度他の検討事項を優先し、進行状況に応じて再検討する。 法解剖サンプルについては、当初対象と考えていた膿瘍や心筋に加え、敗血症を来していると推定される事例において肺などほかの臓器の採取も行い、引き続き採取、分析を行う。本年度前半には新型コロナウイルス感染症に対応した解剖や検体取り扱いができなかったが、その後体制が整ったため、新型コロナウイルス感染症の可能性が否定できない事例で採取・取り扱いを行いたい場合は、他の職員と調整の上で行う。 また状況に応じLC/QTOF-MSを用いた脂質分析の条件検討を行う可能性がある。
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Causes of Carryover |
試薬等について、使用期限等を考慮し既に購入あるいは研究室に保管されていたものを優先し使用していたが、次年度は必要量を購入する必要があり、本年度使用予定額の一部を次年度に使用する。またカラム、消耗品等の購入に充てる。学会参加は行ったもののWeb開催であり旅費の使用はなかった。次年度の開催形式は不明であるが、次年度も参加予定である。
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