2020 Fiscal Year Research-status Report
大麻成分カンナビノイドの毒性発現機構とアルコールの影響に関する研究
Project/Area Number |
19K19483
|
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
則竹 香菜子 東京大学, 大学院医学系研究科(医学部), 特任研究員 (40758067)
|
Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
|
Keywords | Δ9-THC / エタノール / 心筋細胞 / 小胞体ストレス |
Outline of Annual Research Achievements |
昨年度に引き続き、大麻の主要な精神活性成分であるΔ9-テトラヒドロカンナビノール(Δ9-THC)およびアルコール(エタノール)のそれぞれ単独あるいは併用による心筋細胞への影響を検討した。 これまでに、マウス心房筋由来細胞株であるHL-1細胞にΔ9-THCを投与した結果、Δ9-THCの濃度依存的に有意な細胞生存率の低下を認め、細胞質内に多数の空胞が観察されることを確認した。また、エタノールを共投与した群では、細胞生存率の低下や細胞質内の空胞形成はより増悪する結果となった。エタノール単独投与群では細胞生存率の低下も細胞質内の空胞形成も認めなかった。さらに、Δ9-THCによる心筋細胞障害機序を検討するため細胞死関連タンパク質の発現を解析した結果、小胞体ストレスマーカーであるBIPやATF6、アポトーシスマーカーであるCaspase3や Caspase12の発現が誘導されることを確認した。小胞体ストレスを抑制するTUDCAを前投与するとΔ9-THCによる細胞障害が軽減されたことから、Δ9-THCは心筋細胞において小胞体ストレス応答を介した細胞死を引き起こすことが明らかとなった。 Δ9-THCにより細胞質内に形成された空胞の由来を検討するため、小胞体マーカーであるKinectinおよびHSP47の発現ベクターを細胞に導入した結果、一部の空胞とは局在が一致したが、完全な丸い形の空胞とは一致しなかった。この丸い空胞ではマクロピノソームマーカーであるFITC-dextranが取り込まれている様子が観察された。このことから、Δ9-THCによる空胞形成には、小胞体の拡張と、エンドサイトーシスの一種であるマクロピノサイトーシスの促進によるものとの少なくとも2つの機構が関与していることが考えられた。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
大麻成分であるΔ9-THCが小胞体ストレス応答を介した心筋細胞死を誘導することを明らかにし、細胞内空胞形成のメカニズムについての解析も進んでいることから、Δ9-THCによる心筋細胞障害機序に関する研究は順調に進展していると判断している。
|
Strategy for Future Research Activity |
Δ9-THCによる細胞内空胞形成が、小胞体の拡張とマクロピノサイトーシスの促進によって起こることが示唆されたことから、そのメカニズムをさらに解析することで空胞形成の役割について検討する。また、Δ9-THCおよびエタノールの単独投与群と共投与群で心筋細胞への影響ついて比較検討する。
|
Causes of Carryover |
当該年度途中で異動したため、当初予定していたよりも実験を行えなかった。その分、次年度に行うべき実験の増加が予想される。
|
Research Products
(2 results)