2022 Fiscal Year Annual Research Report
大麻成分カンナビノイドの毒性発現機構とアルコールの影響に関する研究
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19K19483
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
則竹 香菜子 東京大学, 大学院医学系研究科(医学部), 特任研究員 (40758067)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | Δ9-THC / エタノール / 心筋細胞 / 小胞体ストレス / マクロピノサイトーシス |
Outline of Annual Research Achievements |
近年、世界的に大麻の規制は緩和される傾向にあり、大麻は世界で最も多くの人に乱用されている薬物といえる。日本では大麻取締法により厳格な規制が行われているが、最近の大麻事犯件数は覚醒剤に次いで多く、とくに若年層の大麻事犯の検挙者数は著しく増加している。近年、流通している大麻に含まれる主要活性成分Δ9-tetrahydrocannabinol (Δ9-THC)の含有量が増加していることが確認されていることから、より強力な作用を有する大麻が乱用されることで重篤な健康被害の発生が懸念される。大麻の使用は、不整脈,虚血性発作,心筋梗塞など、心血管系へ影響を及ぼすことが報告されていることから、本研究ではΔ9-THCの心筋細胞への直接的な影響を検討することとした。また、大麻とアルコールは同時に使用されることが多いことから、Δ9-THCとアルコール(エタノール)の併用による影響について検討した。 マウス心房筋由来細胞株HL-1細胞を用いた実験において、Δ9-THC濃度依存的な細胞生存率の低下、細胞質内の多数の空胞形成を認めた。Δ9-THCの細胞毒性機構について検討した結果、小胞体ストレスを介したアポトーシス細胞死が誘導されることを明らかにした。これらのΔ9-THCの影響に対しエタノールによる明らかな相乗効果は見られなかった。さらに、Δ9-THCによる細胞内空胞形成はエンドサイトーシスの一種であるマクロピノサイトーシスの亢進によるもので、Δ9-THCはマクロピノサイトーシスの活性化因子であり細胞内の栄養状態を感知するAMPKを活性化することが示された。AMPKを阻害するとΔ9-THCによる細胞死が増悪し、一方AMPK活性化剤の共投与で細胞死が抑制されたことから、Δ9-THCによるAMPK活性化はマクロピノサイトーシスの誘導だけでなく、Δ9-THCの毒性に対する細胞保護にも関与していると考えられた。
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Research Products
(1 results)