2021 Fiscal Year Annual Research Report
miRNA解析を中心とした新規溺死診断マーカーの検索と新たな診断法の開発
Project/Area Number |
19K19487
|
Research Institution | Yokohama City University |
Principal Investigator |
前田 一輔 横浜市立大学, 医学部, 助教 (40724761)
|
Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
|
Keywords | 溺死診断 / mRNA / miRNA / RT-qPCR |
Outline of Annual Research Achievements |
法医学実務で経験する溺死症例の中には死後変化の影響により剖検時に鼻口部の細小泡沫、肺の膨隆、胸水貯留などの溺死の特徴的な所見が認められないことがある。さらに、対照水中のプランクトンが少ない水域での溺死では臓器中からのプランクトン検出が難しく、溺死診断が困難となる。そこで、本研究では、溺死診断に有用な分子マーカーの探索を目的として、溺死モデル動物および解剖例の肺のmRNAおよびmiRNAの遺伝子発現解析を行った。今回、淡水または海水を経気道的に注入した溺死モデル動物を作製し、摘出した肺からmiRNAを含むtotal RNAを抽出した。抽出したRNAを用いて肺における細胞内外の浸透圧調節に関与することが報告されているaqp5とtrpv4について遺伝子発現解析を行った。さらに血管内皮細胞に発現しているaqp1、aqp5と同様に肺のI型肺胞上皮細胞に発現しているtp1αについても遺伝子発現解析を行った。その結果、淡水溺死特異的にaqp5は有意に発現が減少し、trpv4は発現が増加した。一方でaqp1とtp1αは各群で遺伝子発現量に変化はなかった。さらにin silico解析にてaqp5に結合する可能性があるmiRNAを探索したところ、miR-96-5pとmiR-185-3pが候補となった。各miRNAについて発現解析を行ったところ、miR-96-5pは各群で発現量に差は認められなかったが、miR-185-3pは淡水溺死群で有意に発現が上昇していた。淡水溺死群で有意に発現変動したaqp5、trpv4、miR-185-3pについて実際の溺死解剖例から採取した肺について遺伝子発現解析を行ったところ、動物実験と同様の結果を得ることができた。以上よりaqp5、trpv4、miR-185-3pは淡水溺死を診断するための分子生物学的な指標となる可能性が示唆された。
|