2019 Fiscal Year Research-status Report
Subclassification of Y chromosome haplogroups in Japanese population and application to personal identification
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19K19489
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Research Institution | Tokai University |
Principal Investigator |
落合 恵理子 東海大学, 医学部, 助教 (60760270)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | Y-SNP / Y染色体ハプログループ / 個人識別 |
Outline of Annual Research Achievements |
Y染色体上の一塩基多型(SNP)の組み合わせで決定されるY染色体ハプログループは、男性系統を示すマーカーとして、集団遺伝学で利用されてきた。ほとんどの日本人集団はハプログループC、D、O系統に属しているとされるが、その中でもYハプログループO1b(O-M268)系統は日本人で最も高頻度のハプログループの一つで、その分布も日本人に極めて偏りが強いことが知られている。特にO1b系統から分類されるO1b2a1a1系統は日本人集団の25%が属しており、より詳細な系統分類が期待される。Yハプログループを個人識別などの法医学的応用を目的として利用するためには高い識別力が必要であり、系統の更なる細分化が求められるところである。そこで、O1b系統に属する日本人のY染色体について、O1b2a1a1より下流の系統を含めて、改めて細分類を試みた。 YハプログループO1b(O-M268)系統を有する,血縁関係のない日本人男性127名の口腔粘膜細胞を試料とした。常法で抽出したDNAを用いて、Y-SNPマーカーIMS-JST022454、CTS713、CTS1875、Z24598、CTS203をターゲットとし、PCR増幅を行った後サンガー法で塩基配列を決定した。さらにY-STR解析を行い、同一ハプログループ内の二検体間におけるSTRのリピートサイズの比較を行った。 分類の結果、O1b系統の検体を6種の系統に分けることができた。特にO1b2a1a1系統を細分類する3種の追加マーカーによって、O1b2a1a1a、O1b2a1a1b、O1b2a1a1c、O1b2a1a1*の4グループに分類され、日本人集団におけるYハプログループの識別能力を向上させることができた。一方で、ハプログループO1b2a1a1*では二検体間のSTRリピートサイズの違いが他よりも大きく、さらに新たな系統が分かれていく可能性が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
複数のY-SNPsを次世代シーケンサーで同時分析し、簡便にYハプログループの細分類を行うことを目標としているが、現在は作成したプライマーセットについて、マルチプレックスPCRの条件検討を行っている段階である。データベースに掲載されているプライマーでは増幅産物のサイズが大きすぎる場合があり、プライマーの再設計を含めて検討する必要がある。 解析対象とするY-SNPの選定にあたり、日本人の25%が属するハプログループO1b2a1a1系統について細分類が可能かどうか確認を行った。その結果、O1b2a1a1系統を更に4グループに分けることができたため、この座位をプライマーセットに加えて解析を行っていく。
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Strategy for Future Research Activity |
1. マルチプレックスPCRの条件検討 ハプログループ毎にプライマーミックスを作成し、被験者のDNAを用いてマルチプレックスPCRを行う。増幅産物から次世代シーケンスのライブラリを作成し、配列解析を行う。シーケンスで得られた各増幅産物のリード数やクオリティを確認し、全ての増幅産物が得られているかどうかをチェックする。増幅効率が悪いSNPがあった場合、プライマーの再設計や温度条件の修正を行う。最終的には全てのプライマーを1本のチューブに混合してマルチプレックスPCRを行えるよう改良を加えていく。 2. 日本人検体を用いたYハプログループの頻度調査 Yハプログループ判定法が確立したところで、日本人試料を用いて判定を行っていき、細分類されたサブグループにおける日本人頻度を調査していく。 3. 分析限界となるDNA量の検討 微量試料への応用に向けて、本法によるYハプログループ判定が可能となる最小のDNA量を調査する。マルチプレックスPCRに用いるDNA量を減らしていき、分析限界を検討する。また、骨や爪などの実際の法医検体が手に入るようであれば、これらから抽出したDNAを使用し、本法での判定が可能であるかを確認する。
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Causes of Carryover |
解析手法の条件検討に時間がかかり、次世代シーケンスに用いる予定であった金額が次年度使用分となった。使用計画としては、次世代シーケンスに用いる消耗品を購入する予定である。
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