2019 Fiscal Year Research-status Report
感染創に対する新規ケア技術の確立~宿主免疫を高めるリンパ球機能に注目して~
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19K19494
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
丹野 寛大 東北大学, 医学系研究科, 助教 (10755664)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 創傷治癒 / 感染 / 白血球 |
Outline of Annual Research Achievements |
褥瘡や糖尿病性下腿潰瘍など慢性創傷の難治化の要因に感染が挙げられる。慢性創傷の90%以上から微生物が検出される、検出される微生物の70%は細菌であり、その中でも緑膿菌は30~40%を占める細菌である。 感染を有する慢性創傷のケアとして、洗浄、デブリードマンなどが選択されるが、宿主の免疫低下などにより、感染の問題を解決することは難しい。細菌の排除には免疫を司る白血球が重要な役割を担う。白血球の中でもリンパ球に注目している。リンパ球の活性化機序はすでに明らかとされており、リンパ球を活性化することにより、好中球、マクロファージ等他の白血球への波及効果も狙うことが出来る。そこで本研究では、リンパ球の活性化が感染創の細菌排除に与える影響について解析した。 リンパ球活性化物質投与マウスおよび、Vehicle投与マウスの背部に直径6 mm皮膚生検用デルマパンチを用い全層欠損層を2つ作成し、緑膿菌PAO1株を7.0~10×10^4 CFUを創部に接種した。経日的に創を摘出し、創部緑膿菌数、サイトカイン産生について比較検討した。Vehicle投与群と比較し、リンパ球活性化物質投与群では創部緑膿菌数が緑膿菌接種5、7日目に有意に低下した。さらに、白血球集積や抗菌性物質産生を促すサイトカインをELISAで測定したところ、リンパ球活性化物質投与により産生量が緑膿菌接種3、5、7日目に有意に増加した。 以上の結果より、リンパ球活性化物質の投与が創部の緑膿菌排除を促進することが明らかとなり、それにはサイトカイン産生増加が関与する可能性が示された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
マウスへのリンパ球活性化物質投与が、創部細菌排除促進およびサイトカイン産生を増加させることが明らかとなったため、2019年度の実験を効率よく実施することが出来たと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
リンパ球活性化による緑膿菌排除・治癒促進の機序解明を予定している。 具体的には、再上皮化率、血管新生、創部白血球分画や、サイトカイン・ケモカイン産生について検討する。 さらに、増加したサイトカイン・ケモカインの中和抗体を投与し、リンパ球活性化による菌排除を担うサイトカインの同定を行う予定である。
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Causes of Carryover |
学会の中止などあり、未使用額が生じた。 2020年度に未使用額も含め、研究費として使用する予定である。
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Research Products
(2 results)