2020 Fiscal Year Research-status Report
患者の多声的ナラティヴを通して転換する精神科看護師の実践
Project/Area Number |
19K19589
|
Research Institution | Konan Women's University |
Principal Investigator |
眞浦 有希 甲南女子大学, 看護リハビリテーション学部, 助教 (40803135)
|
Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
|
Keywords | 精神科看護 / ナラティヴ / オンラインインタビュー |
Outline of Annual Research Achievements |
1.文献研究「病いの語り」を社会的活動として実践する精神障害当事者の経験 医学中央雑誌、MEDLINE、CHINAL、PsycINFOを用いて、国内外のリカバリー志向の援助プログラムにおける「病の語り」の位置づけを検討することとした。しかし、患者による「語り」の経験を分析対象とした研究は極めて少なく、より研究対象とされやすい社会的活動としての「病いの語り」を実践する当事者の活動に焦点化し、当事者の経験を分析した研究を検討対象とした。検索におけるストラテジーについては、大阪大学生命科学図書館参考調査担当の専門司書よりコンサルテーションを受け信頼性・妥当性の向上に努めた。 2.オンライン・インタビュー実施に向けた調査・計画立案 2021年度もCOVID-19の感染収束が不透明な社会情勢にあり、精神科病棟に勤務する看護師を対象としたインタビュー調査を実施する本研究は困難を極めることが予想される。パンデミック下では多くの政府機関・研究教育機関・各種企業等において、リモートによる業務の遂行が推進されるなかで、とりわけクラウド型Web会議システムである「ZOOM」をプラットフォームとした各種活動が拡大している。2020年初め頃の「Zoom」システムは、様々なセキュリティ上の課題が社会問題化したが、その後これらの課題は社会的に容認される程度にリスク低減され、世界的・産業横断的な利用へと発展していると考えられる。「ZOOM」の質的調査研究への利用に関する検討も始められ、個人情報保護の観点からも適切な使用方法によってリスクが低減されること、調査実施者と調査参加者の両者で満足度が高いこと、時間的・地理的・経済的問題の解決となること、パンデミック下における調査研究活動の維持に繋がることなどが報告されている(Gray2020, Lobe2020, Archibald2019)。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
COVID-19感染拡大の影響により学外における活動が大幅に制限されたため、研究依頼を行う予定であった医療施設や、研究協力者である精神科看護師へアプローチすることが困難となった。そのため文献研究を平行して行いながら、オンライン・インタビューを実施するにあたっての調査・計画、所属大学による研究倫理審査などの準備を進めてきた。
|
Strategy for Future Research Activity |
1.「Zoom」によるオンライン・インタビュー実施とインタビューテキストの分析 精神科病棟における患者の「語り」の実際について、患者の「語り」をきくことで生じた精神科看護師の実践の変容やリカバリー志向への転換について、その経験の構造とプロセスを明らかにする。現在精神科病棟に勤務する看護師を対象とする。経験年数等は限定しないが、研究の趣旨やリカバリー志向についての理解や実践的構えなど、十分な研究説明を行った上で参加の検討を依頼する。目標事例数の決定のために理論的飽和等の概念は援用しない。大学業務との両立など時間的制約に依存するなかで、可能な限り分析結果のヴァリエーションが得られるような事例数を検討する。1名2回のインタビューが可能な場合、経験的に10名程度の研究参加者が得られるよう努める。本研究の方法論的基盤として『Dialogical Narrative Analysis(Frank2012)』や『Thematic Analysis(Braun&Clarke2006)』を援用してインタビューやテキストの分析を進める。原則として1名90分程度のオンライン・インタビューを2回行う。1回目のインタビューの後、音声のみ録音したデータから逐語録を作成する。匿名化した逐語録を暗号化された方法で対象者へオンラインで送信(又は郵送)して内容確認を依頼する。1回目のインタビュー内容に基づき、2回目のインタビューを実施する。同様に匿名化した逐語録を研究参加者へ送信し確認を依頼する。分析対象とされたくない内容(発表されたくない内容)などを確認する。
|
Causes of Carryover |
COVID-19感染拡大に伴い学外における研究活動等が制限された。そのためインタビュー謝金や学会等の旅費として使用予定であった経費に大幅な変更が生じた。次年度はオンライン・インタビューとして実施できるよう研究計画を見直し、未使用額については次年度のインタビュー謝金や学外活動が再開できた際の旅費等に使用する予定である。
|