2019 Fiscal Year Research-status Report
精神科救急・急性期病棟看護師のための地域生活の視点を持った看護プロトコールの開発
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19K19619
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Research Institution | Tokyo Health Care University |
Principal Investigator |
田野 将尊 東京医療保健大学, 看護学部, 講師 (70583673)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 精神科救急・急性期病棟 / 病棟看護師 / 地域生活 / 統合失調症 / 認知機能 / 実行機能 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、地域生活を見据えた病棟看護の実践方法を明確化することによって、精神科救急・急性期病棟看護師のための地域生活の視点を持った看護プロトコールを開発することを目的としている。本年度は、統合失調症者の日本における「地域生活」の概念や、日本の精神科病院における地域生活支援等について文献リサーチを行うと共に、学会参加や研究協力者との検討を通して研究計画の具体化を図った。 概念分析の結果、統合失調症者の日本における「地域生活」は、「地域社会の中に生活の場を置き、生活基盤を構築し充実感が得られる生活の営み」と定義された。また、文献レビューの結果、精神科病院の病棟における地域生活支援に焦点を当てている研究論文は少なく、臨床現場の様々な試みについての実践報告に留まっているのが現状であった。地域生活支援の重要性が掲げられてから長年経過しているが、学術的研究としての成果の蓄積が少ない現状が明らかとなった。 これらの知見より、「地域生活の視点を持った看護」を、統合失調症者の認知機能、特に実行機能に焦点を当て、検討することとした。統合失調症者は、健常者と比較して実行機能が障害されている。メタ認知の障害も推測されており、自分の能力や限界を正しく評価したり、適切に自分の行動を方向づけすることが困難である。また、再発を繰り返すことで認知機能低下が認められることから、再入院した統合失調症者の看護プログラムを検討することが、精神科救急・急性期病棟看護師の地域生活の視点を持った看護プロトコールとして有用であると考えられた。諸外国の先行研究による知見を基に、実行機能の改善を目的とした自己教示訓練、問題解決訓練およびメタ認知の強化を目的とした自己洞察訓練を参考に看護プログラムを考案した。今後は、精神科救急・急性期病棟に再入院した統合失調症者を対象として看護プログラムを実施し、その有効性を検証していく。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度の研究計画は、地域生活を見据えた看護を精神科救急・急性期病棟に臨床活用するための概念、具体的方法などを整理し、精神科救急・急性期病棟から退院する患者に必要な地域生活を見据えた看護の特徴を明らかにすることであった。本年度の調査において、統合失調症者における地域生活の概念整理や、「地域生活の視点を持った看護」を統合失調症者の実行機能に対する介入として焦点化を行うことが出来た。一方で、調査による知見から、今後の調査や研究遂行に向けて計画の順序や内容に一部変更も必要であり、それらの検討、調整に一定の時間を要した。
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Strategy for Future Research Activity |
今後、看護プログラムの有用性検証を行い、その後に精神科救急・急性期病棟看護師のための地域生活の視点を持った看護プロトコールを完成させていく形に研究計画の順序や内容を一部変更して研究実施する。 精神科救急・急性期病棟に再入院した統合失調症者を対象として看護プログラムを実施し、その有効性を検証していく。看護プログラム実施前後に自記式質問紙および認知機能検査を実施し、日常生活の計画性や計画修正能力、日常生活上の行動の変化などを評価していく予定である。調査対象施設とスケジュール調整や調査対象者のリクルートを行う。また、調査結果に基づき、看護プログラムの内容の精査や調整を行い、臨床の実践家やスペシャリストによる意見を取り入れ、精神科救急・急性期病棟看護師用の看護プロトコールとしての標準化を目指す。
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Causes of Carryover |
本年度は、概念の整理や看護介入方法の焦点化を行うために文献リサーチや看護プログラムの具体化を行った。調査による知見から、研究計画の一部順序修正や内容の検討および看護プログラムの検証に用いる評価尺度などの準備を行った。これらの手続きに予測以上の時間がかかり、データ解析に関する物品購入や諸経費の使用が年度内にできなかったため、必要経費の未使用が生じた。 次年度は、プログラムの効果検証に係る調査費用(交通費含む)、データ整理や分析に要する物品購入のための消耗品費等の支出を予定している。また、複数の専門家の協力を得て看護プログラムの信頼性や妥当性を確保する。そのため、分析における研究協力費(交通費含む)、会場費、会議運営などの諸経費に研究費を使用する。さらに本研究課題に関連する研究成果を国内外の学会や学術誌で公表するため、その諸経費に研究費を使用する予定である。
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