2023 Fiscal Year Annual Research Report
心筋症を病む人の看取りを経験した家族の語りに基づく意思決定の解明とその看護
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19K19625
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Research Institution | Setsunan University |
Principal Investigator |
青野 美里 摂南大学, 看護学部, 助教 (90793745)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 拡張型心筋症 / 生きられた経験 |
Outline of Annual Research Achievements |
研究実施にかかるプロセスにおいて、当事者性に価値を置く必要があると検討されたことから、当初の計画を一部変更し、心筋症を病む人、なかでも拡張型心筋症(Dilated Cardiomyopathy, 以下DCM)と診断された人のDCMと共に生きる経験を明らかにすることを目的に、DCMと診断され1年以上が経過している人4名に非構造化インタビューを実施した。インタビューはそれぞれの参加者につき4回ずつ実施し(平均81.6分/回)、得られた語りを質的記述的に分析した。 DCMを病む人々にとってのDCMと共に生きる経験は、DCMの症状が出現した時のみが起点となっているのではなく、それ以前の身近な家族や親類、友人の死という喪失の経験が関与していることが浮き彫りとなった。人々はそうした他者の死を通して、自らの死を縁取っており、このことは、DCMと診断される以前に自身の不調をその身体で感じ取っていた際の身体の違和感やひっ迫感、さらには退院後もDCMと共に生きるという経験において、いつ自身の身にも起こるともしれない死、ひいては生との向き合い方に影響していた。DCMと共に生きる経験において、その人の生との向き合い方はそれぞれの家族のかたちで家族と分かち持たれ、DCMと共に生きる経験が更新されていることが明らかになった。 DCMの治療においては、近年植込型補助人工心臓の装着件数や心臓移植待機者が増加傾向であり、待機期間も伸びていることから、DCMを病む人を取り巻く医療は日進月歩である。ともすると、医療中心の看護へ陥る危険性を孕むこの分野において、DCMと共に生きる経験における他者との関係や、単にその病いを患った時からの経験に留まらない奥深い時間を経た経験の成り立ちが明らかになったことは、その人々の経験に根差した看護の重要性が示唆された点において意義のある研究と考える。
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