2019 Fiscal Year Research-status Report
解離状態を引き起こす感情と感情制御:日常場面での動態把握と生起過程の解明に向けて
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19K19628
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Research Institution | Hiroshima Bunka Gakuen University |
Principal Investigator |
池田 龍也 広島文化学園大学, 看護学部, 講師 (20784523)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 解離性体験 / 解離状態 / 感情 / 感情制御 / 人間関係 / 日常生活 / 経験サンプリング法 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は,解離状態がどのような感情および感情制御によって生じるのかについて,日常生活を反映させて実証的に解明することを目的としている。そのために,まずは解離と関連する感情および感情制御方略の候補を挙げ,オンライン調査によって候補を少数に絞り込む。次いで予備調査として解離状態と各感情および感情制御方略の関連度を経験サンプリング法によって調査し,本調査で採用すべきモデルを検討する。同時に,本調査に必要なサンプルサイズをシミュレーションによって明らかにし,本調査に移行する。最終的には上述のように,日常場面における解離状態がどのような感情および感情制御方略によって生じるのかを解明することとした。 令和元年度は最初の段階として,解離と関連する感情および感情制御方略の候補を挙げることが目標であった。具体的には,先行研究から感情および感情制御の候補を挙げ,その感情や感情制御を測定できる心理尺度であって,なおかつ海外の知見との比較検討のために国内外で使用されている心理尺度を探索する段階であった。しかし解離と関連する感情および感情制御方略を単一の尺度で測定することが難しく,候補が予想以上に膨大となり精査に時間を要している。そのため候補を絞り込むための調査を実施できずにいる状態であった。さらに令和2年に入り,新型コロナウィルスの感染拡大に伴い,医療および経済への影響はもちろん,人間関係の質も量も変化した。感情制御方略には,対人的感情制御(人との関わりによる感情制御。例えば,愚痴をこぼすことや,誰かと一緒に楽しいことをする,など)があり,測定すべき感情制御方略に不測の変化が生じてしまった。さらに解離はストレスとも関連があり,人と合わないことや先行きの見えない世情に起因するストレスが個々人の解離に影響している可能性がある。そのためこれらの変化が人間の心理に及ぼす影響を踏まえた調査設計が必要となった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
研究計画書の中で令和元年度(平成31年度)には「解離状態の生起メカニズムに関するレビューおよび測定項目の抽出」と「解離特性と解離状態の関連性に関する横断的調査」を目標とし,令和元年度中には横断調査まで終了している計画であった。しかし「研究実績の概要」でも述べたように,測定項目の候補を挙げる段階で予想を超えた時間を要したため測定項目の絞り込みに至っておらず,さらに測定項目の検討中に不測の事態が発生したため考慮すべき要因(新型コロナウィルスによる各変数への影響)が増えてしまった。そのため調査計画の再考を余儀なくされ,当初の計画から「遅れている」と判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
令和2年度は測定項目の精査を急ぎたい。しかし新型コロナウィルスの感染拡大が心理面および人間関係に及ぼす影響は未知であり,ある程度状況が落ち着いてからの調査が望ましい。そのため9月まで測定項目の精査を続け,これに並行して感染拡大が心理に及ぼす人間関係に及ぼす影響についてのレビューを進める。同時に,当初の研究計画において令和元年度および令和2年度に実施予定であったデータ解析のために,必要となるRスクリプトの作成を進める。 事態が収束する傾向にあれば9月下旬から10月上旬までに倫理審査委員会の承認を得て,10月から11月に横断調査を実施し,以降に使用する変数を絞り込みたい。この横断調査の結果を受けて,当初の研究計画において令和2年度に実施予定であった経験サンプリング法による縦断調査についても,年度内に実施する。9月までにスクリプトコードを作成しておくため,データの納入から解析までは比較的スムースに遂行される見込みである。 当面の課題としては,感染症の拡大がもたらす人間関係の質的および量的な変化と,雇用や生活の基盤となる経済への影響,そしてストレスや不安などの心理的動揺が大部分を占める。感情制御方略を測定する以上,とく人間関係の質的および量的な変化の影響を免れることは極めて困難である。したがって状態が収束する傾向になければ,感情制御方略を測定対象から除外するか,感染症拡大前の特徴が明らかになっている感情制御方略に限定するかして,研究を遂行したい。
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Causes of Carryover |
「研究実績の概要」で触れた通り,測定項目の候補を挙げる段階で予想を超えた時間を要したため調査の実施に至らなかった。そのため調査費用および研究成果の発表に係る旅費を使用しなかった。また物品についても私費で購入したものの残部があり,研究費の使用には至らなかった。令和2年度は学術集会が中止または延期になることが想定されるものの,調査は令和2年度中に実施予定であり,予算執行予定がある。
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