2020 Fiscal Year Research-status Report
高年女性に対するART終結後のQOL向上に向けた看護支援モデルの構築
Project/Area Number |
19K19641
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Research Institution | University of Fukui |
Principal Investigator |
嶋 雅代 福井大学, 学術研究院医学系部門, 講師 (50633385)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 生殖補助医療 / 挙児なし / 終結 / 女性の心身変化 / 高年女性 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、生殖補助医療(以下ART)受療者の40%以上を占める40歳以上の高年女性における治療終結後の更年期様症状の特徴を明らかにし、ART終結後のQOL向上に向けた看護支援モデルを構築することである。 本研究は3年間で行うことを計画している。今年度はART受療にもかかわらず挙児を授かることなく治療を終結した女性の心身の状況について文献レビューによって明らかにし、ART終結後の女性への看護支援について検討した。その結果、心理・社会的状況について、女性のFertiQoL(不妊に関わる生活の質尺度)はパートナーよりも有意に低く(HR=-6.31[95%CI:-7.63-4.98])、SCREENIVF(不妊治療に伴う精神疾患のリスク指標)は女性の方が有意に高かった(HR =0.22[95%CI:0.06-0.38])。一方、ARTで挙児を得た女性と比較しても全体的な人生の満足度や友情とパートナーシップへの満足度、性的満足度の有意差はなかった。また、自分の経験を統合して精神的に成長したり、子どものいない人生を前向きに捉えて自分らしい生き方を見出していた。身体的状況については、ART終結後最初の2年間の死亡率が低いことが示された(HR=0.65[95%CI:0.61-0.70])が、10年後の差はなかった。これらの結果から、ARTを受けても子どもを授からないことは、治療中のみならず終結後も女性の心理・社会面に大きな影響を及ぼすと考える。しかし、ARTで挙児を得た女性と比較しても全体的な人生やパートナーシップ、性的満足度に有意差はないことから、ARTの治療過程とは直接関連しない個別的な背景要因も影響すると考える。一方、身体への影響について検討している文献はなく、ART終結後の身体的変化について明らかにすることにより、ART終結後のQOLに貢献すると考える。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
研究協力施設との調整はできており、協力的に話を進めている。しかし、研究対象者となる「ART受療にも関わらず挙児を授かることなく治療を終結した40歳以上の女性」が当初見込みよりも少なく、また研究協力依頼をするタイミングも困難な状況である。
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Strategy for Future Research Activity |
研究協力施設は確保できており、研究対象者への依頼をこのまま進めていくことで目標症例数に達すると予測する。また研究者のネットワークを利用し、研究協力施設を増やすことを検討中である。
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Causes of Carryover |
研究協力施設担当者との打ち合わせ、発表を予定している国内の学術集会などがオンラインとなり、旅費が未使用である。また、研究対象者が計画通りに見込めなかったため、謝金も未使用である。2021年度は謝金に加えて研究対象者における心身の不調がARTで使用した女性ホルモン剤からの離脱症状であるのか血中FSH値で判断する必要があるため、当初の研究計画に加えて血液検査に使用する予定である。
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