2019 Fiscal Year Research-status Report
GABA作用から探る運動麻痺回復時の脳可塑性に訓練の違いが及ぼす影響の検証
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19K19785
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Research Institution | Hirosaki University |
Principal Investigator |
佐藤 ちひろ 弘前大学, 保健学研究科, 助教 (70757468)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 脳卒中モデルラット / 作業療法 / 感覚刺激 / 脳可塑性 |
Outline of Annual Research Achievements |
手の運動麻痺が患者の生活に及ぼす弊害は非常に大きいが、効果的治療法は明らかでない。発症直後などは重篤な麻痺を呈する患者にとって、難易度の高い訓練は実施に伴う精神的負担感が強く、実施にストレスを感じる場面も多い。訓練に伴うストレスは機能回復を阻害させることを自身の研究で明らかにしており(Neuroreport, 2020)、重症度や回復時期に応じて介入方法を考慮する必要があると考える。負担感の少ない治療手段の一つに、他動的関節運動による求心性感覚入力がある。本年度は、運動麻痺に対する効果的治療法の検証のために運動麻痺を呈するモデルラットに対して2種類の運動介入を実施した。1つは自動運動による餌に対するリーチ運動と、前述のリーチ運動に相当する他動運動である。これらの介入を術後4-10日目まで実施し、その後の運動麻痺回復効果を検証した。さらに、機能回復時の脳内変化や関連因子を評価するため、介入後に大脳皮質運動感覚野における神経栄養因子(BDNF)の発現量および血中コルチコステロン濃度を解析した。 その結果、運動介入期間の早期には他動運動群における機能が回復の傾向を示し、訓練開始後期には遅れて自動運動群の回復が認められた。最終的な回復の程度に有意差はなかった。ストレス状態に関しては、自動運動群においてコルチコステロン濃度が高く、介入後の14日目において行ったBDNF産生量に関しては、二群に有意差は認められなかった。 これらの結果より、介入種類の違いにより運動機能回復に効果的な時期が異なる可能性があり、早期の運動麻痺が重度な時期においては他動的運動による感覚入力が機能回復を促進させる可能性が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度は感覚刺激による求心性入力による運動麻痺に対する回復効果が検証でき、運動麻痺の重症度や発症後の時期に応じた訓練内容の変遷の必要性を確認できたため。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度までの成果により、他動運動による麻痺回復効果及び運動手法による効果的時期の違いが明らかとなった。 今後、運動機能回復時に起こる脳内における変化を捉える必要があり、次年度以降には脳機能評価、特にKCC2の変遷に着目した評価が必要である。 今年度実施したBDNF評価に加え、KCC2発現の評価を時期別に進める必要がある。
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Causes of Carryover |
学会開催可否に変更があったため。 次年度以降、消耗品購入のために必要。
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Research Products
(8 results)