2019 Fiscal Year Research-status Report
統合失調症患者の予測に基づく認知・運動機能の評価方法の構築に関する基礎的研究
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19K19790
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Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
菊池 ゆひ 金沢大学, 保健学系, 助教 (00749137)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 予測 / 認知機能 / 運動制御 / 小脳 / 統合失調症 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では,統合失調症の予測の障害と脳機能および認知・社会機能との関連性について検討し,予測に基づく認知・運動課題を用いた認知機能の評価法の構築をめざしている.その方法として,「重りの負荷課題」を用い,次の3点について検討した. (1)予測に基づく手の動きを簡便に計測する方法について.これまで,「重りの負荷課題」を実施する際に,一定の負荷量と負荷のタイミングの記録のため,SPIDARという装置を用いてきた.より多くの被験者で行うため,また臨床で使用するためには,場所を問わず,測定できる簡易的な方法が必要となった.そこで,「重りの負荷課題」の簡易的な方法を構築し,負荷のタイミングの同定,予測に基づく手の動きの解析方法について検討した.重り,および手に装着した加速度・角速度センサデータの特性から,負荷のタイミングの同定が可能となった.また,これまでの方法で得られた結果と同様に,簡易的な方法においても,予測に基づく手の動き(先行反応)を捉えられることができた.(2)予測に基づく手の動きの質的・量的な分析について.これまで,予測に基づく手の動きとして,手の位置変化,加速度を測定してきた.先行反応の有無は評価できたが,先行反応が小さい要因は,負荷のタイミングが予測できていない,負荷前の筋緊張が高いなどが考えられたが,明らかではなかった.今回,新たに筋活動を測定し,健常者を対象に,予測の有無による手の動きの量的・質的分析を行った.負荷前と負荷後の筋活動を比較することにより,先行反応が小さい場合の筋活動のパターンの違いを捉えることができた.(3)先行反応と認知機能との関連性について.統合失調症の社会的予後に関連する認知機能低下と先行反応との関連性を検討した.先行反応が小さいほど,発症後の認知機能低下が大きいことが明らかとなり,先行反応と認知機能との関連性が示唆された.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の初年度の予定は「健常者の加齢に伴う変化」を調べることであったが、データ測定・解析を効率的に行うために、「加齢の変化」を調べる代わりに「簡易的測定法およびその解析法」の開発に力を注いだ。また、次年度の予定であった「統合失調症患者の予測の障害と認知機能との関係」について、前倒しで調べることができた。以上から、おおむね順調に進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は当初の予定通り,10歳代~60歳代の健常者を対象とし,予測に基づく認知・運動機能の発達と加齢による変化を明らかにする.また統合失調症者においては,予測の障害と認知機能との関連性,また,縦断的調査を行い,予測の障害の改善の有無,精神症状,予後との関連性について検討する予定である.
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Causes of Carryover |
次年度使用額が生じた理由 当初,効率的に解析を進めるため,解析の研究補助を依頼する予定であった.本年度は,質的・量的分析の測定と分析法の検討,簡易的な実験方法の検討を主に行っており,研究補助を依頼するに至らなかった. 次年度使用額の使用計画 今年度の研究で至らなかった被験者の対象年代を広げていく予定である.そのため,効率的に研究を進めるため,研究補助,解析プログラムに経費を使用する予定である.
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Research Products
(1 results)