2020 Fiscal Year Annual Research Report
末梢神経損傷に対する人工神経導管移植術と超音波治療の相乗効果検証
Project/Area Number |
19K19793
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
伊藤 明良 京都大学, 医学研究科, 助教 (50762134)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 超音波 / 物理療法 / 理学療法 / 末梢神経損傷 / リハビリテーション |
Outline of Annual Research Achievements |
研究期間最終年度として、人工神経移植治療と超音波治療(以下、US)の併用による相乗治療効果を検討するための基礎として、USの末梢神経再生作用メカニズムを経時的な遺伝子発現解析にて検討した。 実験動物として12週齢のLewis系雄性ラットを用いた。麻酔下で片側の坐骨神経に対して鉗子で2 mm幅の挫滅損傷を作成した。損傷作成後、無作為にUS群と疑似照射群(Sham群)の2群に振り分けた。損傷から3、7、14、30日後に坐骨神経を回収し、定量的リアルタイムポリメラーゼ連鎖反応によって遺伝子発現解析を実施した。また、正常コントロールラット(Ctrl群)からも坐骨神経を回収し、同様に遺伝子発現解析を実施した。その結果、神経栄養因子である脳由来神経栄養因子(BDNF)の発現は、損傷14日後にピークを迎え、損傷30日後には減弱する傾向が認められた。損傷30日後、Sham群ではCtrl群と比較して有意差が認められなくなったが、US群では依然としてCtrl群よりも有意に高い発現を示した。さらにUS群では、損傷30日後における発現がSham群と比較して有意に高かった。神経成長因子(NGF)の発現は、Ctrl群と比較してUS群において損傷3日後から高い発現傾向を示し、損傷7日後にピークを迎えて減少した。低親和性神経成長因子受容体(NGFR)の発現は、US群とSham群の間に有意な差は認められなかった。以上のことから、Sham群と比較してUS群は、BDNFの発現がより長期にわたって高発現を維持する傾向が認められた。 末梢神経再生に対するUSの作用メカニズムの一つとして、BDNFの発現上昇が関与していることが示唆された。
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