2019 Fiscal Year Research-status Report
体外循環モデルラットの骨格筋における酸素・循環動態の解明
Project/Area Number |
19K19806
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Research Institution | Niigata University of Health and Welfare |
Principal Investigator |
堀田 一樹 新潟医療福祉大学, リハビリテーション学部, 講師 (30791248)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 高酸素血症 / 骨格筋 / 酸素クエンチング / 体外循環 |
Outline of Annual Research Achievements |
体外式膜型人工肺(ECMO)を用いた体外循環は,人工肺で血液が過度に酸素化されることで高酸素血症となる場合がある.高酸素血症は酸化ストレスを介した様々な臓器応答を引き起こす.本研究では,体外循環により高酸素血症に至った際の骨格筋における酸素・循環動態を明らかにすることが目的である.
まず初めに正常なSDラットを対象に,酸素プローブ(Oxyphor PdG4)を前脛骨筋に投与し,酸素クエンチング法によりラット骨格筋の間質における酸素分圧の計測に取り組んだ.また,ラットの吸入気酸素濃度を21%から100%へと漸増させた際の,動脈血および骨格筋間質の酸素分圧をそれぞれ計測した.その結果,動脈血の酸素分圧は吸入気酸素濃度が21%でおよそ平均88 mmHgであり,100%の高濃度酸素を吸入させると,動脈血酸素分圧は6倍程度に増加した.一方で,骨格筋間質の酸素分圧は吸入気酸素濃度が21%の時点で平均15 mmHgであったのに対して,100%高濃度酸素投与で10 mmHgに減少した.したがって,高酸素血症モデルラットでは骨格筋における酸素分圧は増加しないどころか,むしろ低下することが示された.この動脈血と組織中の酸素分圧の解離に関与する因子として,細動脈レベルの血管制御が考えられる.そこで,100%の高濃度酸素を吸入中に,強力な血管拡張作用を有するニトロプルシドナトリウムと血管平滑筋の収縮を阻害するα受容体拮抗薬をラットの血中に投与した.すると,骨格筋間質における酸素分圧は投与前から5-6倍程度に増加した.これらの結果は,動脈血酸素分圧の増加は血管制御を介して筋組織中の酸素流入の制限に関与していることを示唆している.現在,体外循環モデルラットを作成し,上述の結果と一貫した結果を示すか確認しているところである.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
体外循環モデルラットの作成でやや遅れが生じている.正常ラットでは酸素クエンチング法による骨格筋の酸素分圧の計測が問題なく行えているが,体外循環モデルラットでは測定中に全身の呼吸循環動態が不安定化するケースが続いており,実験方法に修正が必要となっている.共同研究者とともに問題解決にあたっており,2020年5月中にはモデルラットでの実験を開始予定である.
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Strategy for Future Research Activity |
体外循環モデルラットを用いて,骨格筋における酸素分圧の計測を進めていく予定である.2020年5-6月には体外循環モデルのラットで酸素分圧の計測を完了し,データ解析を進める予定である.7-8月には体外循環から離脱後のラットで骨格筋の組織学的な解析を進めていく.
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Causes of Carryover |
次年度使用額が発生した理由は,人工肺を使った体外循環モデル動物での実験の開始が遅れているためである.2020年度においては,体外循環モデル動物を使用した実験を進めていくため,当該助成金を順次使用する予定である.
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