2020 Fiscal Year Research-status Report
難治性疼痛に対する中枢-末梢同時電気刺激の有効性のトランスレーショナルリサーチ
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19K19829
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Research Institution | University of Fukui |
Principal Investigator |
松尾 英明 福井大学, 学術研究院医学系部門(附属病院部), 理学療法士 (60529387)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 中枢-末梢同時電気刺激 / 神経障害性疼痛 / リハビリテーション / 経頭蓋直流電気刺激 / 経皮的末梢神経電気刺激 / 上肢運動機能障害 |
Outline of Annual Research Achievements |
令和2年度の基礎研究では、前年度と同様に動物用tDCS方法の確立が未だ困難な状態であり、すでに刺激方法を確立しているTENSの鎮痛メカニズムの一端を解明するための実験を行っている。 臨床研究では、中心性頸髄損傷後の上肢運動機能障害と痺れを呈した一症例に対して、tDCS+TENSの同時刺激の有効性を検証した。tDCS+TENSの同時刺激を開始するまでは通常のリハビリテーションを実施していたが、上肢機能も痺れ感も改善を得られることはできなかった。tDCS+TENSの同時刺激直前までは、上肢機能を評価するBox and block test(BBT)で0個と全く運動困難であったが、同時刺激直後にBBT6個まで可能となり、上肢運動機能に対する明らかな即時的効果が観察された。その後、3回にわたって同時刺激を実施したところ経時的にも上肢運動機能の改善を得られ、最終的にBBT32個まで可能となり、食事動作や更衣動作の介助量が減少した。また、しびれ感も同時に経時的な軽減が得られた。回復期病院に転院の後、3か月程度の通常のリハビリテーションで上肢機能の改善、ADL自立となった。1症例による検討ではあるが、tDCS+TENSによる同時刺激は、皮質脊髄路の伝導路の障害である頸髄疾患でも運動機能の改善を得られる可能性、同時に異常感覚の改善にも有用である可能性を確認することができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
動物実験においては、動物用tDCSの刺激方法の確立に難渋している。対策として、既存の論文などを参考にしているが、技術的に難しい部分もある。すでに確立している施設への見学なども検討したが、現状のコロナ感染状況では容易ではない。また、臨床研究においてもコロナ禍による診療制限などがあり、容易に介入研究を進めるには難しい部分もある。まずは、一例報告を重ね、環境が整い次第、介入研究に進めたい。
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Strategy for Future Research Activity |
動物を用いた基礎研究は、既存の論文をもとにtDCS方法の確立を目指す。それと同時にすでに刺激方法の確立しているTENSの鎮痛メカニズムについて、脊髄後角神経細胞、伝達物質に着目して解析する予定である。 臨床研究は、今後は頚椎症性脊髄症のような頸髄疾患を対象に、上肢の痛み、痺れなどの異常感覚、運動機能障害の改善を目的にtDCS+TENSの同時刺激の有効性を検討する。刺激あり、なしの2群によるRCTまたは刺激による即時的な効果をCross over designで検討する予定である。
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Causes of Carryover |
臨床研究により早く着手するためにtDCS刺激装置の購入を一年早めた。その購入のために、予算分を前倒し請求し購入した。近年、計画書作成時よりもtDCS刺激装置の価格が低下したため、次年度使用額が生じた。生じた次年度使用額は、以前から購入を検討していた痛覚神経の閾値を定量化できる携帯型末梢神経電気刺激装置の購入を計画し、同時刺激の効果判定の一つとして用いる予定である。
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