2019 Fiscal Year Research-status Report
慢性めまいに対するバーチャルリアリティを用いた新たな前庭リハビリの開発
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19K19844
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Research Institution | Japan University of Health Sciences |
Principal Investigator |
加茂 智彦 日本保健医療大学, 保健医療学部理学療法学科, 助教 (80802909)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | めまい / 前庭リハビリ / 転倒 |
Outline of Annual Research Achievements |
現在までに日本語原著論文が3本アクセプト、日本語論文1本投稿中、英語論文1本投稿中となっている。また、前庭リハビリに関する書籍を1冊出版した。日本語論文では末梢前庭障害患者に対する前庭リハビリの効果を検証した。本研究では、めまい患者に対して、週1回、1回40分に加えて、自宅での前庭リハビリを1か月間実施した。コントロール群には、自宅での前庭リハビリのみを指導した。その結果、前庭リハビリを受けた群は前庭リハビリを受けていない群に比べて、めまいの頻度、程度、バランス機能、心身機能が有意に改善していた。 また、他にもめまい患者の転倒リスクに関する研究を実施した。めまい患者を対象に、身体機能、歩行、質問紙など様々な視点からの転倒リスク評価ツールを比較した。その結果、身体機能の低下による転倒リスクのある人が質問紙による転倒リスクがあるわけでなく、めまいの症状や、めまいの原因となる疾患、めまいの程度によって、転倒リスクを抽出するツールを使い分ける必要があることが示唆された。 また、上記の研究に加えて、末梢前庭障害患者に対する自宅での前庭リハビリの効果を検証した。本研究はめまい患者に対して、月に1回、1回40分の前庭リハビリに加えて、自宅でのめまいリハビリを実施するように指示した。期間は3か月であった。その結果より、月1回の前庭リハビリでは最低3か月以上続ける必要があることが示唆された。 上記の原著論文に加えて、日本ではほとんど実施されていない前庭リハビリの本を執筆し、日本における前庭リハビリの普及を行った。 これらの研究より、日本ではほとんど実施されていないめまい患者に対する前庭リハビリに関するエビデンスの蓄積を行うことができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の課題1(末梢の一側前庭障害患者において、前庭リハビリの効果に影響を与える要因の検討)に関してはおおむね順調に推移している。今後も症例数のさらなる増加を行っていく予定である。課題1に関連した論文を3本投稿している。課題2(末梢の両側前庭障害患者と一側前庭障害患者に対する前庭リハビリの効果の違い)に関してはおおむね順調に推移している。両側前庭障害患者は対象者数が集まりにくい状態である。今後も継続してデータを集めていく予定である。 課題3(末梢の一側前庭障害患者に対するVR前庭リハビリの効果)に関しては、現在VRプログラムの開発は終了している。
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Strategy for Future Research Activity |
課題1に関しては現在までのデータ測定を今後も継続して実施していく。測定場所は引き続き目白大学耳科学研究所クリニックを予定している。新型コロナウイルスの影響に伴い、対象者の確保が難しくなる可能性が考えられるが、可能な限りデータの収集を行い、データ数を増やしていきたいと考えている。 課題2(末梢の両側前庭障害患者と一側前庭障害患者に対する前庭リハビリの効果の違い)に関しては疾患の種類を増やしていくことを検討している。2017年に持続性知覚性姿勢誘発めまい(Persistent Postural-Perceptual Dizziness:PPPD)というめまいに対する新たな疾患が提唱され、現在日本においても浸透してきている。そのため、本研究においてもPPPDの疾患も対象に含めることを検討している。 課題3(末梢の一側前庭障害患者に対するVR前庭リハビリの効果)に関しては、VRのプログラムは完成している。先行研究から、PPPD患者にVRの前庭リハビリが効果的である可能性が示されているため、対象の一部変更・追加を検討している最中である。また、PPPDに対するVR前庭リハビリの効果ではなく、PPPDに対する前庭リハビリの効果を検証する必要があるため、VR前庭リハビリの前にPPPDに対する前庭リハビリの効果の検証に修正する必要があるかもしれない。今後出版された論文に応じて柔軟に変更していきたいと考えている。
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Causes of Carryover |
当初より人件費、その他の支出が少なかったため、次年度使用額が生じた。次年度よりデータ測定回数の増加に伴う人件費、英語論文執筆に伴う英文校正費やオープンアクセス費用などに充てる予定である。
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