2020 Fiscal Year Research-status Report
閉経後の骨格筋における水分代謝とサルコペニア:運動の予防効果の分子メカニズム
Project/Area Number |
19K19887
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Research Institution | Juntendo University |
Principal Investigator |
洪 永豊 順天堂大学, スポーツ健康科学研究科, 博士研究員 (40826575)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | サルコペニア / エストロゲン / 水分代謝 / アクアポリン / 筋力トレーニング |
Outline of Annual Research Achievements |
高齢期骨格筋の特徴として、骨格筋量の減少および筋力の低下と伴に骨格筋内水分量が低下することが知られている。特に、加齢に伴う骨格筋内水分の低下は男性よりも女性の方が顕著である。その要因のひとつとして女性ホルモンであるエストロゲンが関与している可能性がある。しかし、エストロゲンが骨格筋の水分量に及ぼす影響の分子メカニズムは明らかではない。 本研究では、エストロゲンによる骨格筋水分代謝の調節機構に着眼して、サルコペニアおよび閉経後の女性における筋萎縮および運動による筋萎縮予防の分子メカニズムを解明することを目的とした。本年度は、運動トレーニングによる骨格筋重量と骨格筋水分代謝調節因子であるアクアポリン(AQP)4とナトリウム・カリウム・塩素イオン共輸送体 (NKCC)1の変動に及ぼす加齢(閉経)と性差の影響を検討した。若年期(4ヶ月齢)、閉経前(10ヶ月齢)、閉経後(16ヶ月齢)、高齢期(22ヶ月齢)のF344系雌性および同月齢の雄性ラットを実験動物として用いた。各月齢時に安静飼育群と筋力トレーニング群に分類し計8群とした(各群6-10匹)。筋力トレーニングは、はしごを用いたクライミング運動を3日に1日の頻度で8週間、計20セッションを実施した。各セッションでは、尾につけるおもりの重量によって負荷量を調節し、最大負荷の状態で1日10回のクライミングを疲労困憊まで行わせた。被験筋はヒラメ筋、足底筋、長母趾屈筋、腓腹筋、大腿四頭筋を摘出した。各骨格筋の重量について2元配置分散分析の結果、対象とした全ての被験筋において、体重当たりの筋重量では雄および雌とも加齢に伴い低下し、加齢による主効果が認められた。また、筋力トレーニングによる筋重量の増加の主効果が認められた。現在、AQP4およびNKCC1のタンパク質発現量を評価するためにウエスタブロット法を用いて解析を進めている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本年度は、高齢期ラットを用いて、加齢および性差が筋力トレーニングによる骨格筋重量の増加に及ぼす影響を明らかにした。その結果、筋力トレーニングによる体重当たりの筋重量の増加率は雄および雌とも加齢に伴い減少することが認められた。閉経前後の影響を検討するため、閉経前(10ヶ月齢)と閉経後(16ヶ月齢)ラットを比較し、筋力トレーニングによる体重当たりの筋重量の増加率は加齢(閉経)顕著に低下した。この結果はエストロゲンが関与している可能性が考えられた。今後は、骨格筋水分量とその調節因子であるAQP4とNKCC1の変動は検討していく予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究課題としては、AQP4とNKCC1のタンパク質の発現を早急に検討し、エストロゲンや筋力トレーニングが骨格筋の水分量に及ぼす影響の分子メカニズムの詳細を明らかにしていく予定である。
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Causes of Carryover |
2020年度に必要な消耗品は全て購入し、実験も終了しているが、わずかに残額が生じた。使用計画は次年度に必要な消耗品の購入のために使用する予定である。
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Research Products
(1 results)