2020 Fiscal Year Research-status Report
拡張現実を用いた脳卒中患者の歩行に対する革新的治療プログラムの開発
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19K19891
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Research Institution | Health Science University |
Principal Investigator |
駒形 純也 健康科学大学, 健康科学部, 助教 (20712798)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 脳卒中患者 / 歩行 / 拡張現実刺激 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、身体バランスの不安定な脳卒中患者に対して光学透過型ヘッドマウントディスプレイ(HMD)を用いた刺激を行い、歩行に与える影響を定量的に解析し、歩行能力向上のための拡張現実 (AR)を用いた新たな治療方法(ARシステム)を開発することを目的としている。脳卒中患者の歩行能力低下の原因として、麻痺側の立脚時間が短く、下肢荷重量が低いことが挙げられる。そこで、AR刺激が脳卒中患者の歩行時麻痺側荷重量を増大させ、歩行能力向上に有効であるか明らかにする。 2020年度は、新たに開発された視野角の広い光学透過型HMDを用いて実験を行った。そのため2020年度前半は、新たな光学透過型HMD用にAR刺激提示ソフトウェアの改良を実施した。光学透過型HMDのディスプレイ上にランダムドットを提示し、左右・回旋方向に連続的に移動させ、AR刺激とした。そして、重心の移動を最も誘発し、かつ安全に実施可能な刺激強度を明らかにするため、刺激速度や空間周波数等を系統的に変え、重心動揺測定を実施した。健常若年者において、AR刺激により立位時の身体重心が刺激方向に有意に偏移することが確認され、光学透過型HMDを用いたAR刺激が身体重心の偏移に有効であることが示唆された。2020年度後半からは、重心動揺測定時と同じAR刺激を提示し、健常若年者の歩行測定を実施した。その結果、回旋方向(時計周り方向)のAR刺激により左足と比較して右足の立脚時間が有意に延長することが明らかとなった。また、平均足底圧もAR刺激を提示しない条件よりも明らかに増加することが明らかとなった。これらの結果から、光学透過型HMD を用いたARシステムが、脳卒中患者の歩行練習に応用できる可能性が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
新型コロナウイルス感染拡大の影響を受け、健常者の測定の実施が困難となり、想定していた被験者数をやや下回っている状況である。そのため、脳卒中患者を対象とした測定の開始が予定より遅れている。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでに構築した拡張現実(AR)システムを用いて、健常若年者および健常高齢者を対象とした歩行測定を継続し行っていく。当初の予定よりは遅れているが、脳卒中患者を対象とした歩行測定を開始し、即時的な効果が得られるか検証を行う。
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Causes of Carryover |
物品を当初の予定よりも低い金額にて購入できたこと、新型コロナウイルス感染拡大の影響により、学会がオンライン開催に変更となり旅費を使用しなかったことにより、次年度使用額が生じた。 次年度使用額は、成果報告のための学会発表および論文作成費に使用する予定である。
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