2019 Fiscal Year Research-status Report
重症心身障害児の活動性を向上する新しい座位姿勢保持部品の開発と導入
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19K19896
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Research Institution | Kawasaki University of Medical Welfare |
Principal Investigator |
永田 裕恒 川崎医療福祉大学, 医療技術学部, 助教 (60804549)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 重症心身障害児 / 座位保持装置 / 膝ブロック / 殿部ずれ力 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、重症心身障害児(以下、重症児)が使用する座位保持装置について、姿勢の崩れや不安定性の原因となる骨盤の前方への滑り(殿部ずれ力)を軽減する姿勢保持部品である膝ブロックを作製し、安定した座位姿勢を提供する目的で実施している。 当該年度では、重症児の座位保持装置上での座位姿勢は、坐骨圧に大きく左右差が生じて場合が多く、それは骨盤の前方への滑り、殿部ずれ力を増大し、座位姿勢の崩れを増強してしまうと考えられる。そこで、坐骨圧の非対称性がリクライニング車椅子を使用した時の殿部ずれ力に及ぼす影響について健常者を対象として検討した。その結果、リクライニング車椅子を使用し、体幹を倒して起こすというリクライニング操作を繰り返すことにより、左右非対称な坐骨圧での殿部ずれ力は、より坐骨圧の高い側で増大し、坐骨圧の低い側で減少することが明らかとなった。このように、左右の殿部ずれ力に差異が生じ、一側殿部は前方への滑りが抑制され、もう一方の殿部は前方への滑りを助長させるといった左右非対称により、大きく座位姿勢が崩れてしまう要因となり得る。したがって、座位において坐骨圧の左右差が拡大することにより、殿部ずれ力は増大もしくは減少を示し、その非対称が姿勢の崩れを助長してしまうことが示唆された。 上記の検証結果から重症児の安定した座位姿勢は、座位保持装置の基本構造や座面クッションなどを検討する必要があるが、重症児が使用する座位保持装置は変形や拘縮などの身体状況に合わせて作製されており、基本構造を変更することは多大な時間と労力を要する。したがって、作製する膝ブロックはこれらを考慮し、既存の座位保持装置に脱着することにより、いつでも、誰とでも安定した座位姿勢を提供できる膝ブロックを作製する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究課題である重症心身障害児を対象とした座位姿勢保持部品の開発と作製については、現在検討を進めているが、まだ完成に至っていない。しかし、座位姿勢保持部品を導入するにあたり、座位姿勢の基礎的な研究が必要となる。その点に関しては、健常者を対象として坐骨圧の非対称性がリクライニング車椅子を使用した時の殿部ずれ力に及ぼす影響についての検討を行うことができている。これらの研究成果は、現在、学術論文1編が審査中であり、成果発表は学術大会にて発表する予定となっているため、これまでの実験自体はおおむね順調に進んでいる。
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Strategy for Future Research Activity |
令和2年度(2020年)には、実際の座位保持装置を使用している少人数の重症児を対象に実験的介入を行う。これまでに得られた研究結果をもとに、座位保持装置に付加する膝ブロックを開発・改良し、実用的な膝ブロックを検討していく。また、それらの結果を第17回日本シーティング・シンポジウム、第37回日本義肢学会学術集会にて発表する予定である。また、それらの内容を論文投稿し、公表していく予定である。
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Causes of Carryover |
令和元年度(2019年)の成果発表である学術大会が令和2年度(2020年)に行われるため、その参加費等が執行されていないなどの理由により、次年度使用額が生じている。次年度以降の使用計画については、実験で使用する膝ブロックの作製・導入費用、その後実験に必要となる被験者への謝礼品や論文投稿費・英文校正費に使用する予定である。
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