2019 Fiscal Year Research-status Report
How do somatosensory deficits after stroke relate to the recovery of fine finger movements
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19K19898
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Research Institution | National Center of Neurology and Psychiatry |
Principal Investigator |
窪田 慎治 国立研究開発法人国立精神・神経医療研究センター, 神経研究所 モデル動物開発研究部, 外来研究員 (40835419)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 筋感覚 / 手指運動機能 / 一次体性感覚野 / リハビリテーション / 脳損傷 |
Outline of Annual Research Achievements |
脳卒中後の運動機能障害の中でも、手指の巧緻運動機能の回復は最も難しい。この一因として、手指の巧緻運動の制御に深く関与している筋感覚情報の処理を担う神経機構に関しての理解が進んでいないことが挙げられる。本研究では、手指の巧緻運動機の制御に深く関与しているとされる筋感覚情報に焦点を当て、その情報処理を行う神経機構を明らかにするとともに、体性感覚機能障害を呈した運動麻痺モデルを用いて運動に伴い誘起される体性感覚情報が手指の巧緻運動機能の回復に及ぼす影響を明らかにすることを目的とする。本研究を通して、運動感覚という側面から手指の巧緻運動機能の回復を促すリハビリテーション方法の創出を目指す。 当該年度は、主に標的脳部位への薬液注入を可能にする実験システムの構築および実験個体であるマカクサルの行動訓練などを中心に行った。本研究では、主に固有感覚を用いて運動を制御する実験課題を用いることが肝となる。そこで、視覚フィードバックを用いて手首の屈伸運動を制御する課題の学習を行わせた後、視覚フィードバックが無い状態で学習した運動を再現する課題(固有感覚フィードバックを利用した課題)を作成し、訓練を行った。結果、十分に学習した運動であれば、視覚フィードバックがなくても、ある程度運動を再現できることが確認できたが、一方で課題の難易度が高くなると(正確性が高くなる)、課題の持続が困難になるなど問題点も見られているため、今後最適な課題条件の検討を継続していく。標的脳部位への薬液注入に関しては、脳深部である脳幹楔状束核への注入に成功しており、筋感覚を伝達する感覚伝導路の選択的な活動阻害などが可能な状況を確立できている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当該年度は、当初の実験計画の通り実験対象であるマカクサルの行動訓練を中心に行った。今後、実験課題の修正などは必要であるが、本研究の肝である固有感覚を用いて運動を制御する課題を作成することはできている。今後、神経活動を記録するための外科的手術等を予定している。また、当初の実験計画では、大脳皮質の一次体性感覚野を対象としていたが、脳深部への薬液注入を可能とする実験システムを確立することができたことから、高次の脳領域だけでなく、脳幹を含めた感覚伝導路を標的とすることが可能となった。運動に伴う体性感覚情報の処理機構を包括的に理解する上で、感覚伝導路の選択的な操作は、研究の質を高めることにつながるため、重要な進展であった。 以上が本年度の状況である。当初の実験計画から一部修正を行ったものの研究計画全体は概ね順調に進展していると判断する。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究の推進方策としては、実験個体の行動訓練を継続して行うとともに、個体の進捗状況に合わせて以下の手順で実験を実施する。実験に必要な外科的手術(筋電ワイヤ埋め込み、神経カフ電極埋め込み等)を実施し、体調および課題パフォーマンスの回復を確認した後、皮質内微小電気刺激による一次運動野の体部位局在マップおよび、末梢感覚刺激による一次体性感覚野の体部位局在マップを作成し、手指領域の同定を行う。また、脳幹部における感覚中継核(視床、楔状束核)においても同様に上肢の皮膚および筋感覚入力を受ける受容野の同定を行う。同定した領域にGABA作動薬であるムシモルまたはナトリウムチャネルブロッカーであるリドカインを投与し、薬理的操作による当該領域の不活性化が運動機能に及ぼす影響について手指運動課題を用いて検証するとともに、その際の感覚関連領域の神経活動を記録することで、体性感覚伝導路の適応反応を確認する。上記検証後、手指の筋感覚に関わる感覚伝導路に損傷を引き起こし、体性感覚障害モデルを作成する。損傷後、リハビリテーションとして手指運動課題を行い、体性感覚機能の障害が巧緻運動機能の回復に及ぼす影響について検証する。
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Causes of Carryover |
別実験課題で用いている実験課題装置の実験プログラムを当該実験の目的に即したものに改良して用いたことで、実験課題装置の作成費用を削減できたため。また、当初購入を予定していた実験装置が、生産中止となったため、代替品への変更を行たことで、当初よりも予算削減となった。代替品に関しては、実験装置の機能などは異なるものの、実験自体に直接的な影響はない。 次年度の使用計画としては、当該年度の実験成果として脳深部を標的とした実験アプローチが可能となったことから、効率的に神経活動を記録するため、神経活動記録用の多極電極など消耗品の購入費用に予算を当てる。多極電極を用いることで、多くの実験データを一度に収集することが可能となり、実験の進展が見込まれる。
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