2019 Fiscal Year Research-status Report
固有感覚入力を受ける脊髄介在ニューロンの運動制御における役割
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19K19907
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
中川 浩 大阪大学, 免疫学フロンティア研究センター, 特任助教(常勤) (10732901)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 脊髄介在ニューロン |
Outline of Annual Research Achievements |
中枢神経は外界からの刺激などによって常に機能的、構造的な変化(神経可塑性)を起こしており、このような変化は中枢神経損傷後の機能回復のみならず運動学習や、記憶などにおいても重要な役割を担っている。本研究では、ウイルスベクターを利用した神経ネットワーク解析や解剖学・行動学的解析を駆使して、脊髄介在ニューロン(INs)を介した末梢からの感覚入力が運動機能に及ぼす影響を明らかにするとともに新規運動学習および中枢神経損傷後の運動機能回復の神経基盤の確立につなげることを目的とした。 現在まで、中枢神経損傷後における影響を先行して解析するためモデル作製から行った。当該モデルにおいて、自然経過に伴う運動機能回復がみられるか否かについていくつかの行動評価を用いて解析した。その結果、いずれの行動解析においても損傷直後には著しい機能障害を示したが、徐々にその機能回復が認められた。また、行動評価の難易度によっても、回復の程度に差がみられた。この結果は、当該モデルにおいても中枢神経損傷後に運動機能を代償する機構が働いていることを示すとともに、適切なモデル作製ができたことを示唆している。次に、この代償性機構に脊髄介在ニューロンが寄与しているか否かを明らかにする目的で、神経細胞死を誘導する薬剤を脊髄内に注入した。その結果、一度機能回復を示した個体においてその機能が再度悪化した。これは、脊髄介在ニューロンが、運動機能回復に直接寄与している可能性を示唆する結果である。一連の行動解析が終了した後、神経細胞死が適切に誘導されているか否かを解剖学的に確認した。その結果、薬剤注入を行った領域においては、神経細胞の脱落が観察された。また、損傷部位において適切に損傷が施されていることが確認できた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
現在まで、本研究仮説の一部を行動学的および薬理学的解析により明らかにすることができている。
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Strategy for Future Research Activity |
これまで、中枢神経損傷後において神経回路のリモデリングが機能回復の重要な要素のひとつであり、脳内のみではなく脊髄内や脳から脊髄に投射する神経路などさまざまな領域で起こっていることが知られている。これまでの結果より、脊髄介在ニューロンが中枢神経損傷後の運動機能回復に寄与していることが明らかとなった。今後は、リモデリングを起こす分子メカニズムについてin vitroとin vivo実験により進めていくとともに解剖学的な解析を追加していく予定である。
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