2019 Fiscal Year Research-status Report
習慣的な運動による腸内細菌叢改善は循環器疾患を予防するか
Project/Area Number |
19K19962
|
Research Institution | Ritsumeikan University |
Principal Investigator |
内田 昌孝 立命館大学, スポーツ健康科学部, 助教 (40779063)
|
Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
|
Keywords | 運動習慣 / 腸内細菌 / 動脈硬化 |
Outline of Annual Research Achievements |
心血管疾患の基礎病変であるアテローム性動脈硬化発症の原因として腸内細菌叢の異常やそれに伴う肝臓脂質代謝の異常が指摘されている。運動習慣がアテローム性動脈硬化症を予防することは報告されているが、腸内細菌叢や肝臓の脂質代謝の正常化を介した予防効果があるかは明らかでない。そこで本研究は、病態モデルマウスの、アテローム性動脈硬化発症に対する運動習慣の予防効果を腸内細菌叢や肝臓の脂質代謝の観点から検討することを目的とした。 実験には、ApoEノックアウト 雄マウス 4 週齢 を、安静(SED)群、自発運動(Ex)群、に分け、高脂肪食を自由摂取として飼育した。自発運動には、24 時間アクセス可能な 回転ケージを使用した。野生型マウスとしてC57/BL6オスマウス4 週齢 を健常コントロール(Ctrl)群として飼育した。飼育期間中、摂食量および体重の測定を行い、動脈硬化病変の評価のため組織染色を行った。血中脂質指標および肝臓での代謝マーカーの測定を行った。 その結果、体重は病態モデルマウスにおいて顕著な増加が観察され、自発運動群では安静群に比べて低値を示した。血中脂質マーカーも安静群では動脈硬化病変が観察される傾向が示されたが、自発運動群において動脈硬化病変の改善効果が観察された。このことから、運動習慣が病態モデルマウスの代謝マーカーや動脈硬化病変を改善することが示された。また、肝臓における脂質代謝に関連した因子は、安静群で低下する傾向が観察され、運動習慣によって、脂質代謝関連因子低下の改善効果が観察された。さらに、運動習慣による腸内細菌叢の改善効果も観察された。 以上の結果より、運動習慣による代謝マーカーや動脈硬化病変の予防効果が示され、肝臓での脂質代謝因子や腸内細菌叢の改善が関与する可能性が現在までの段階で明らかとなっている。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究はおおむね順調に進展しており、予定していた実験1については、すでにサンプリングまで終了している。順次、ターゲットとしている腸内細菌叢の分析や肝臓の代謝調節因子の解析を進める準備も十分整っている。運動によるマウスの腸内細菌叢の変化についての解析は、糞便中細菌DNA抽出を終え、一部解析は現在進行中である。
|
Strategy for Future Research Activity |
病態モデルマウスにおいて、高脂肪食餌摂取による動脈硬化病変や血液指標の悪化が観察されるなど病態形成を示しており、仮説の妥当性が示されつつある。また、運動習慣による病態改善効果も一部示されている。一方、この病態改善効果と肝臓脂質代謝因子や腸内細菌叢の関与の可能性も考えられることから、病態モデルマウスの腸内細菌叢の特徴について分析を進めるとともに、改善効果があった自発運動したマウスからの腸内細菌叢との差異を検するとともに、病態に関連した指標との関連性を検討することで、運動習慣による病変改善効果と腸内細菌叢の影響について検討していく。
|
Causes of Carryover |
研究については順調に進んでおり、それに伴い適切に予算を執行している。一部、当初予定額より安価な消耗品購入額や安価な委託費用を実現できたため令和元年の予算残高が生じたが、おおむね順調に予算の執行ができている。次年度以降は、運動習慣による病態改善効果と肝臓脂質代謝因子や腸内細菌叢の変化がどのように関与するかを検討するため、肝臓、血管および腸内細菌叢の代謝関連因子の遺伝子解析を行う上で必要な試薬および消耗品の購入費として使用し、計画的な研究の実施を予定している。計画的な研究の実施にあたり、腸内細菌叢の追加解析を行うとともに、動脈硬化病変形成の原因となる代謝産物の検討を予定している。最終的な成果報告として国際学術誌への投稿を念頭に研究を進めている。
|
Research Products
(9 results)