2020 Fiscal Year Research-status Report
習慣的な運動による腸内細菌叢改善は循環器疾患を予防するか
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19K19962
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Research Institution | Ritsumeikan University |
Principal Investigator |
内田 昌孝 立命館大学, グローバルイノベーション研究機構, 助教 (40779063)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 運動 / 腸内細菌叢 / 動脈硬化 |
Outline of Annual Research Achievements |
心血管疾患の基礎病変であるアテローム性動脈硬化発症の原因として腸内細菌叢の異常やそれに伴う肝臓脂質代謝の異常が指摘されている。運動習慣がアテローム性動脈硬化症を予防することは報告されているが、腸内細菌叢や肝臓の脂質代謝の正常化を介した予防効果があるかは明らかでない。そこで本研究は、病態モデルマウスの、アテローム性動脈硬化発症に対する運動習慣の予防効果を腸内細菌叢や肝臓の脂質代謝の観点から検討することを目的とした。本年度においては、腸内細菌叢データの詳細な解析を行った。腸内細菌叢の多様性指標は、野生型マウスに比べて、病態モデルマウスで低下する傾向を示した。また細菌種の構成比の変化も観察された。さらに、腸内細菌叢のβ多様性を比較したところ、野生型マウスに比べて、病態モデルマウスで明らかに異なる細菌叢の特徴を示すことが明らかとなった。しかしながら、病態モデルマウスの運動群と安静群では、腸内細菌叢のβ多様性がわずかながら異なっており、病態モデルマウスで形成された腸内細菌叢が、運動によって変化する可能性が示唆された。また、肝臓での慢性炎症の発症と運動による抑制作用が観察された。肝臓における炎症は脂質代謝を変化させ、肝炎や肝硬変を誘発する要因となる。運動による炎肝臓での炎症抑制が脂質代謝低下を改善させ、全身の脂質指標に影響することで、動脈硬化病変の改善につながった可能性が考えられる。今後は肝臓での脂質指標の改善と炎症、腸内細菌種の変化との相互の関係を検討することで、腸―肝臓の改善を介した血管機能改善メカニズムを検討していく。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
研究の進展はやや遅れている。予定していた実験1については、当初の予定通り完遂でき、便移植用のサンプルはすでに採取している。しかし、緊急事態宣言に伴う大学内での人員の規制により当初計画していた規模での移植実験を行うことが困難であった。規模を縮小し移植実験を行い弁移植効果の検証を行っている。このため便の詳細な解析を行うとともに、肝臓の代謝調節因子の解析を進めている。一部解析は現在進行中である。
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Strategy for Future Research Activity |
病態モデルマウスにおいて、高脂肪食餌摂取による動脈硬化病変や血液指標の悪化が観察されるなど病態形成を示しており、仮説の妥当性が示されつつある。病態モデルマウスの腸内細菌叢の特徴について分析を進めるとともに、改善効果があった自発運動したマウスからの腸内細菌叢との差異を検討し、病態に関連した指標との関連性を検討することで、運動習慣による病変改善効果と腸内細菌叢の影響について検討していく。
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Causes of Carryover |
研究についてはやや遅れているものの、適切に予算を執行している。一部、当初予定額より安価な消耗品購入額や安価な委託費用を実現できたため令和元年の予算残高が生じた。また、コロナ環境下で行った実験の追加実験を行うことを予定している。次年度以降は、運動習慣による病態改善効果と肝臓脂質代謝因子や腸内細菌叢の変化がどのように関与するかを検討するため、肝臓、血管および腸内細菌叢の代謝関連因子の遺伝子解析を行う上で必要な試薬および消耗品の購入費として使用し、計画的な研究の実施を予定している。計画的な研究の実施にあたり、腸内細菌叢の追加解析を行うとともに、動脈硬化病変形成の原因となる代謝産物の検討を予定している。最終的な成果報告として国際学術誌への投稿を念頭に研究を進めている。
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Research Products
(9 results)