2021 Fiscal Year Research-status Report
Educational program for Athlete – Integrity of Sports -
Project/Area Number |
19K19978
|
Research Institution | Kobe University of Welfare |
Principal Investigator |
岡井 理香 神戸医療福祉大学, 人間社会学部, 准教授 (40816104)
|
Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
|
Keywords | スポーツ教育学 / 保健体育科教育 / SDGs / スポーツインテグリティ / 教師教育 / アスリート育成パスウェイ |
Outline of Annual Research Achievements |
2021年度は昨年度に引き続き、中等教育の保健体育科教育におけるスポーツインテグリティ教育を検討することを目的に、教師教育の実証的研究を行った。対象は、スポーツ科学系の大学にて中学校・高等学校の教諭第一種免許状(保健体育)の取得を目指す教職課程の39名の大学生とし、「スポーツ×体育理論」「スポーツ×SDGs」「保健体育×SDGs」の観点から、『スポーツの本質的な意義と価値』と『スポーツインテグリティ』を学び、考えることを主題とする教材研究と教材づくりを演習形式で行った。 本プログラムでは、以下の2つの課題を設定し、個人思考と協同学習のサイクルを適宜くり返すことで各自とグループの知識・思考・表現の深化を目指した。 【演習課題1】4人1組でグループを編成。4人の協同により上記をテーマとする授業を制作し、リレー方式で50分の授業を完成・実践する。 【演習課題2】SDGsの計17のテーマにおいて、「3.すべての人に健康と福祉を」および「4.質の高い教育をみんなに」の2テーマは保健体育科教育に共通テーマに設定し、プラス1テーマを選択。各テーマ2-3人のグループを編成し、すべてのSDGsテーマを網羅する形で授業づくりに取り組んだ。課題2における本授業実践は個人単位とし、1人1つの授業を作成、制作授業はYouTubeにて履修生全体で共有した。 上記の両課題における各グループおよび個人の教育実践は、教職生同士の授業参観を経て相互に評価、その後自他の授業分析と評価のフィードバックを基にグループワークによって毎時改善の手続きが検討された。これらの2つの課題を通して、自他の授業分析を行うとともに、様々な視座・視野・視点からスポーツを考察し、教育現場での実践力を養うことを目指した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
上記の研究概要に記した教育実践について、学生による自他の授業分析および評価は5を最高評価とする5段階で行い、「授業の目的・ゴールが明確であった:4.43±0.75」、「目的とゴールに応じた知識・理解が得られた:4.50±0.67」、「目的とゴールに応じた思考力・判断力・表現力が得られた:4.39±0.69」、「目的とゴールに向けて主体的に学びに向かう姿勢が得られた:4.38±0.73」の結果が示された。これらの結果は、本プログラムが1)教員として必要な授業づくりと教育実践に関する基本的な知識とスキルの養成に寄与できたこと、2)前述の事項に基づきグループ、および個人で模擬授業が行われたことを示唆する。 一方、学生の授業実践、自他評価および自由記述のテキスト分析の結果からは、「スポーツインテグリティに対する知識」、「SDGsに対する知識」、「スポーツ対する多様な考えや、スポーツの捉え方」、「問いの設定力」、「グループワークの設定力」、「伝える力」、「タイムマネジメント」、「教材開発力」、「授業のアイディア」、「授業準備力」、「臨機応変力」、「コメント力」が主たる課題として抽出された。 以上のことから、本年度実施したプログラムは、教員を目指す学生の授業力向上には寄与したものの、「スポーツインテグリティ」の観点から学生自身が「スポーツの本質」を考える授業を創る上ではさらなる検討が必要な結果であることが示された。上記の課題を解決するために、現在も同対象者にプログラムを継続中であり、YouTubeでの授業共有形式を通して、自分自身の授業をより客観的に見ることで自己分析と授業改善の手続きの深化を目指している。
|
Strategy for Future Research Activity |
本研究はスポーツインテグリティの観点から、1)スポーツの本質と価値・意義を考える教材およびプログラムの開発を目指すこと、2)一部のトップアスリートや指導者だけでなく、地域のアスリートやアントラージュを含めたスポーツ支援者がスポーツに関わる教養として、スポーツインテグリティを学ぶことのできる機会の創出すること、3)スポーツインテグリティ教育 を「する・見る・支える・考える・知る」すべての関わりにおける重点課題として、保健体育科教育からアプローチすることを目標に掲げている。 2020年度から2021年度にかけては新型コロナウイルスにより、各地のスポーツアカデミーやスポーツ団体の研修の機会が失われ、上記1と3に注力した教育実践を行った。本年度の成果と課題を踏まえ、2022年度も本年度行った「保健体育科の教員を目指す教職課程の大学生」を対象とするプログラムを引き続き検討・実践するとともに、現職の先生方ともスポーツインテグリティ教育を共有・検討する機会を設けたい。また、地域のジュニアアスリートアカデミーやスポーツ関連の研修会においてスポーツインテグリティを学び、考えることのできる機会を創出し、中学校等の運動部活動の完全外部化と地域移行も視野に入れた教育プログラムを各地域へ提供したい。さらに、独立行政法人日本スポーツ振興センターのアスリート育成パスウェイ事業、およびワールドクラスパスウェイネットワークと情報共有・連携・協力を図り、「スポーツインテグリティ教育」を日本のスポーツ界に根付かせることを目指す。
|
Causes of Carryover |
2020年度に引き続き、新型コロナウイルスによる影響を受け、出張や現地での調査が大きく制限された。そのため研究期間を1年延長、使用額を研究の遂行状況と社会背景に応じて適宜変更し、安心・安全を確保した上で研究教育活動を行う。
|