2019 Fiscal Year Research-status Report
女性アスリートの疲労骨折予防に対するMTHFRのSNPおよび血漿Hcy濃度の関与
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19K19993
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Research Institution | Kinjo Gakuin University |
Principal Investigator |
峰松 明也子 金城学院大学, 生活環境学部, 助教 (40712998)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | MTHFR / 遺伝子変異 / 疲労骨折 / 女性アスリート / 血漿ホモシステイン濃度 / 骨質 |
Outline of Annual Research Achievements |
2019年度は、MTHFR遺伝変異という個人の先天的因子の重要性を確認するため、遺伝子変異、血中ホモシステイン濃度を含めた既知の疲労骨折関連因子を調査した。その後、主成分分析を実施し、遺伝子変異を含めた各因子の寄与度、位置づけを検討した。 第1主成分において最も系数値が大きい因子は「MTHFR遺伝子変異の有無」であった。それに引き続いて、肋骨や脚の骨密度、そして疲労骨折歴と続いた。さらに、第2主成分においては、骨質劣化に関連する血漿成分濃度が含まれた。また、遺伝子変異の有無、血漿成分濃度および疲労骨折歴の傾向性を調査した。その結果、遺伝子変異保有者は非保有者よりも疲労骨折経験を有する有意な傾向がみられた。また、骨質劣化に関連する血漿成分において、有意に強い正の相関関係がみられた。結論として、疲労骨折リスクの高い女性長距離陸上選手においては、疲労骨折に関連する因子の中でMTHFR遺伝子変異が重要な影響力を有することが示唆された。その遺伝子変異を基準としたとき、変異を有する方が骨質劣化関連物質の濃度は高く、また、疲労骨折経験を有するという有意な傾向がみられた。疲労骨折早期予防のためのリスク評価には、骨密度のみではなく、MTHFR遺伝子変異を判定することも重要であることが示唆された。 骨質劣化に関連する血中成分、およびMTHFR遺伝子変異に関する研究は多数存在する。しかし、対象者として高齢者(特に閉経後の女性)がほとんどである。また、骨折の関連因子は様々報告されているが、単独の因子を調査しており複数因子を包括的に検討していない。疲労骨折のリスクが高い女性アスリートに対し、既知の因子を網羅的に調査し主成分分析を行うことで各因子の位置づけを示すことが課題である。遺伝子変異という個人の先天的因子の重要性を示すことができれば、疲労骨折予防のためのスクリーニングに活用することができる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の計画全体として、個人の遺伝子変異に対応したテーラーメイド栄養指導を用いた女性アスリートの疲労骨折予防法の確立を目指すために、以下の3項目を実施する。1つ目は、「疲労骨折関連因子の調査および主成分分析」。2つ目は「安静時、運動負荷時の血中ホモシステインの変動調査」。3つ目は「MTHFRの遺伝子変異別血中Hcy濃度の分布調査および基準値の検討」としている。そして、本研究の対象者は、研究に同意をいただいた大学陸上部女子長距離部門に所属する選手約40名、実業団女性駅伝選手約20名を計画、実施している。 当初の計画として、2019年度は、1つ目の「疲労骨折関連因子の調査および主成分分析」を予定していた。その内容は、同意をいただいた対象者のDNAをPCR-RFLP法によってMTHFR遺伝子変異の有無を判定し、既知の様々な疲労骨折関連因子を調査した。年齢、競技歴、月間走行距離、過去の疲労骨折経験、月経の有無、サプリメントの使用については調査票を用い、食事調査にはBDHQ-Lを用いた。身長、体重、部位の骨密度およびYAM値を測定した。血液検査では、血中Hcy濃度、ビタミンD、B群および葉酸濃度を測定した。全因子の調査が完了した後、主成分分析を実施し各因子の位置づけを検討した。 研究実績の概要にも示した通り、「疲労骨折関連因子の調査および主成分分析」は計画通り実施することができたため、(2)おおむね順調に進展している、を選択するに至った。
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Strategy for Future Research Activity |
2020年度は、研究計画にある2つ目の「安静時、運動負荷時の血中ホモシステインの変動調査」を実施予定である。また、2か年計画の「MTHFRの遺伝子変異別血中ホモシステイン濃度の分布調査および基準値の検討」も継続予定である。 「安静時、運動負荷時の血中ホモシステインの変動調査」は、同意をいただいた対象者において、MTHFRの遺伝子変異の有無で分類を行う。そして、安静時と運動負荷時の条件において変動調査を行う。安静時においては、1日の血中ホモシステイン濃度の変化を調査するため、早朝空腹時、昼食前、夕食前に採血を行う。食事の影響を検討するため、前日および当日の食事(計6食)は研究者が管理した食事を提供する。エネルギー2200kcal/day、たんぱく質85g/day、脂質60g/day、炭水化物320g/dayとする。運動の影響を除外するため、走行運動を禁止し、歩行運動のみを可とする。 さらに、運動負荷時には、安静時の変動調査と同じ被験者とし、同じ食事を提供する。採血は、運動実施前後を含めるため、早朝空腹時および運動前、運動直後、昼食前、夕食前に採血を行う。運動の条件は、一過性の持久性運動を実施する。 本研究を実施するにあたり、ヒト介入試験に関しては既にいくつかの女性長距離陸上選手が所属する施設とは本研究の趣旨を説明し、協力に同意をいただいており、一部の施設に関しては予備的研究を実施している。また、本研究を遂行するに必要な実験設備や機器は全て、申請者が所属していた研究室施設に揃っており、日常的に稼動している。
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Causes of Carryover |
2019年度において、計画していた「人件費・謝金」について、申請者が所属していた研究施設および女性長距離陸上選手が所属する施設の協力により、執行がなされていない。また、食事調査票においても研究施設の協力により、執行がなされていない状況である。さらに、「国内旅費」として計上していた予算についても、研究施設の協力によって、血漿サンプルの分析が申請者と同時並行で実施されており、計画よりも少ない執行となっている。 2020年度では、「MTHFRの遺伝子変異別血中Hcy濃度の分布調査および基準値の検討」のための継続した血漿サンプルの分析、調査に必要な試薬および消耗品について予算の執行を行う予定である。同様に「安静時、運動負荷時の血中ホモシステインの変動調査」を実施するにあたり、試薬および消耗品について継続して執行を行う。さらに、変動調査において被験者のMTHFRの遺伝子変異別プロファイルの比較を行うため、血漿サンプルの網羅解析としてのメタボローム解析を業者委託する予定である。
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