2020 Fiscal Year Research-status Report
筋-脂肪組織ネットワークによる骨格筋制御の特性を考慮した運動プログラムの開発
Project/Area Number |
19K20026
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Research Institution | Kansai Medical University |
Principal Investigator |
黒瀬 聖司 関西医科大学, 医学部, 講師 (80825951)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 肥満 / アディポカイン / マイオカイン / 骨格筋 |
Outline of Annual Research Achievements |
令和元年度は肥満患者とサルコペニアのアディポネクチン(APN)とマイオスタチン(MSTN)を比較して特徴を把握した。令和2年度は肥満患者のAPNとMSTNの性差や体組成との関連性を検討した。全体のAPNは2.9μg/mL、MSTNは2398.4 pg/mLであり、男性の肥満患者は女性よりもAPNが有意に低く、MSTNは有意に高値を示した。 次に肥満患者の体組成と身体機能、代謝因子に対するAPNとMSTNの関連性を検討した。APNは骨格筋量や筋力の指標、インスリン抵抗性と負の相関関係を認めた。多変量解析によって、APNの有意な独立因子は下肢筋力(体重補正値)、HOMA-IR、CRPが抽出され、骨格筋量に関する指標は抽出されなかったが、筋力との負の関連性を認めた。これは、APNパラドックスの存在を示唆する可能性もある。MSTNは骨格筋量や筋力の指標と正の相関関係を認め、多変量解析では四肢除脂肪率(体重補正値)、RHI(反応性充血指数)、イリシンが抽出された。今回の解析では骨格筋量の絶対量の指標は除外され、体重補正値の四肢除脂肪率が抽出された。MSTNは通常の状態では骨格筋量が多いとMSTN濃度を高めることで骨格筋量が増えすぎないように負に作用するが、今回の結果から、血中MSTNは骨格筋量の絶対量ではなく、体重に対する比率によって分泌を調整している可能性が示された。 これらの結果は、PLoS One (16: e0245678, 2021)で発表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
肥満患者の横断研究は予定通りに実施でき、学会発表および論文発表ができた。横断的解析では、APNとMSTNとの間に直接的な関連性を認めなかったが、それぞれが独立して筋力や筋量などの骨格筋機能や代謝因子に関与していた。 肥満患者の骨格筋機能には、APNとMSTNの双方が重要な役割を担っていると考えられ、縦断的に体組成とアディポネクチン、マイオスタチンの変化を分析する。
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Strategy for Future Research Activity |
当初の予定では、肥満患者に対して運動に特化した介入を行う予定であった。しかし、現時点では直接的なアディポネクチンとマイオスタチンのクロストークが不明であり、まずは運動、食事、心理の包括的な減量プログラムによる体組成変化とアディポネクチン、マイオスタチンの変化を評価し、運動耐容能や身体活動量との関連性を検証することを優先する。その結果は論文化し、減量プログラム時に骨格筋量を維持させるための運動方法や新規マーカーを提案する。
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Causes of Carryover |
COVID-19の影響によって学術集会がオンライン化され、旅費に変更が生じた。また一部測定できていない項目があり、測定キットの購入やオープンアクセスジャーナルの掲載費用に充てることを検討している。
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[Presentation] 肥満患者のアディポネクチンおよびマイオスタチンと栄養摂取量との関係2021
Author(s)
吉内佐和子, 中村夏子, 中嶋佐知子, 北村晃子, 吉田三嘉, 田村美帆, 黒瀬聖司, 高尾奈那, 宮内拓史, 藤井彩, 木村穣
Organizer
第41回日本肥満学会・第38回日本肥満症治療学会学術集会
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