2022 Fiscal Year Annual Research Report
他者の不安表情の知覚が実践的な運動パフォーマンスに及ぼす影響
Project/Area Number |
19K20030
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Research Institution | Nishinippon Junior College |
Principal Investigator |
小川 茜 西日本短期大学, 健康スポーツコミュニケーション学科, 准教授 (60788488)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 情動伝染 / 不安 / 運動パフォーマンス / 感情 / あがり |
Outline of Annual Research Achievements |
心理的プレッシャーによる運動パフォーマンス低下(“あがり”)に悩むスポーツ選手は多く, プレッシャーにより不安感情が生じること等がこれまでに明らかになっている. しかし集団種目における“あがり”に着目した研究は少なく, プレッシャー下で何が起きているかは十分に明らかでない. 集団種目ではチームメイト等他者の存在もパフォーマンスに大きく影響する点に本研究は着目して“情動伝染”(他者の感情が伝染する現象)を取り上げ, 不安の情動伝染と実践的な運動課題における運動パフォーマンスの関係を調べた. 実験参加者13名に, 前方床に設置した的へ向けてボールを下手で投げる的当て課題を行わせた。ボールを投げる直前に他者の不安表情を見る不安条件を10試行, 中性表情を見る中性条件を10試行行わせた。情動伝染生起の確認のため, 主観的指標として質問紙を用いて不安感情を測定し, 生理指標として表情筋 (前頭筋, 皺眉筋, 大頬骨筋) を測定した. 運動パフォーマンスは的の中心を5点として中心から遠くなるにしたがい4~0点として測定した. 分析の結果, 他者の中性表情を見た後よりも不安表情を見た後において不安感情が高く, また運動パフォーマンスは悪くなる傾向が示された. 一方でいずれの表情であるかに関わらず, 不安感情の変化が小さかった実験参加者の方が不安感情の変化が大きかった実験参加者よりも前頭筋が有意に活性化しており, ネガティブな感情を感じていたことが示唆された. これらの結果から, 不安の情動伝染により実践的な運動パフォーマンスが低下する可能性が示唆されたものの, 感情の変化をさほど感じていない人の方が生理的にはネガティブ感情を生じさせていたという主観的指標と客観的指標のずれも確認される結果となった.
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