2019 Fiscal Year Research-status Report
屋外暑熱環境下における最適な身体冷却法の探索的研究-輻射熱に着目して-
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19K20032
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Research Institution | National Agency for the Advancement of Sports and Health |
Principal Investigator |
内藤 貴司 独立行政法人日本スポーツ振興センター国立スポーツ科学センター, スポーツ研究部, 契約研究員 (20806278)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 輻射熱 / 日光 / 持久的運動能力 / 皮膚温 / 深部体温 |
Outline of Annual Research Achievements |
暑熱環境下での持久的運動能力の低下は、身体冷却によって抑制することができる。近年注目されているアイススラリー摂取による身体冷却法は深部体温の低下に有効であることが数多く示されているが、ほとんどの研究はラボ研究である。屋外では日光による輻射熱が体温動態に影響を及ぼすこと(特に皮膚温)が予想され、アイススラリー摂取に加えて別の身体冷却法を組み合わせる必要がある。2019年はパイロットスタディとして日光および日陰下の暑熱運動時における体温動態と持久的運動能力の相違を検討した。輻射熱の違いが体温動態、特に皮膚温の上昇を惹起し、持久的運動能力を低下させると仮説を立てた。 7名の男性被験者は、日光下 (快晴:輻射熱約1000 W/m2) もしくは日陰下 (曇天:約300 W/m2) で自転車エルゴメーターを用いて60%VO2max強度で疲労困憊まで運動を行った。体温動態は直腸温、上腕温、胸部温、大腿温および下腿温を測定した。全ての実験内容は国立スポーツ科学センターの倫理審査委員会で認められ、被験者には十分説明を実施し、同意のもと行った。 疲労困憊までの運動時間は、快晴下が曇天下に比べ有意に短かった。深部体温である直腸温は輻射熱の影響を受けない、一方で平均皮膚温は快晴下で有意に高値を示し、特に上腕温、大腿温および下腿温で有意な差が認められた。暑熱環境下に日光による輻射熱が加わると、皮膚温が持久的運動能力の決定要因になることが示唆された。輻射熱を伴う屋外暑熱環境下では深部体温の上昇に加えて、皮膚温の上昇も抑制する必要があることが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2019年は、実験環境の整備が計画通り行えた。本研究は天候に依存して進捗状況が変化してしまうが、2019年は快晴の日にちが例年に比べ多かったため、問題なく実験を実施することができた。取得したデータは解析を行い、文章化を行っている。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は今回得られた知見を基に、新たな身体冷却法の探索を行う。日光下では持久的運動能力維持のために深部体温の上昇に加えて、皮膚温の上昇を抑制することが喫緊の課題なる。先行研究(ラボ研究)で用いられてきた方略や新たな身体冷却法を使用し、体温動態と持久的運動能力の相違を検討していく。
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Causes of Carryover |
2019年度は基礎実験として、身体冷却を行わない実験を実施した。研究計画では2019年度に身体冷却物を購入予定であったが、基礎実験の結果を分析した後に購入を検討していた。しかし、データ分析を終えたのが3月であり、所属機関の調達の締め切りに間に合わなかった。したがって、2020年度に購入する予定である。
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