2020 Fiscal Year Research-status Report
スポーツ指導者による運動部員に対する非人間化が体罰への容認的態度に与える影響
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19K20039
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
寺口 司 大阪大学, 人間科学研究科, 助教 (30779567)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 体罰 / 非人間化 / 攻撃行動 |
Outline of Annual Research Achievements |
前年度に引き続き、本年度では運動部員に対する潜在的な非人間化が体罰の容認に繋がっているのかを検討するため、潜在的非人間化を測定する非人間化IATの開発を行った。前年度の研究結果では潜在的非人間化と体罰の容認については関連が認められず、顕在的な運動部員の動物化(人間性の否定)により体罰事件における加害者が容認されやすいことが示された。そこで、本年度では非人間化IATの妥当性を検討するため、あらためて前年度と同様のWeb実験を行った。加えて、前年度の研究では体罰事件の記事を読んだ後に運動部員の非人間化について尋ねているため、順序効果が発生した可能性がある。そこで本年度ではランダムに半数の参加者には体罰記事を読んだ後に非人間化尺度を,もう半数の参加者には非人間化尺度の回答の後に体罰記事を読んでもらい回答を求めた。 体罰の正当化に非人間化が与える影響を検討するため,体罰の正当化得点を目的変数とする重回帰分析を行ったところ非人間化尺度の提示順序によって動物化得点に差異が認められたため,提示順序ごとに分析を行った。その結果,体罰の正当化について回答した後に非人間化尺度の回答を行った群では,運動部員に対する相対的な動物化が体罰の正当化に対してポジティブな影響を与えていた。一方で非人間化尺度に先に回答した群ではその傾向は認められなかった。以上から,被害者への非人間化は体罰の正当化と関連はするものの,個々人が持つ信念が影響を与えるのではないことが示された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
本年度では元々の計画においては実験室実験を行うことで運動部員に対する潜在的非人間化の計測方法を確立する予定であった。しかし、コロナウイルスの蔓延により対面実験が中止となったため、検証が難しくなっている。特に、前年度・本年度の研究結果から非人間化IATの問題がWeb上という実験環境によるものなのか、それとも非人間化IATそのものにあるのかを検討する必要がある現段階において、対面実験が出来ない状況は研究の進展において大きな阻害要因となっている。
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Strategy for Future Research Activity |
先述の通り、前年度の研究結果および本年度の研究結果から非人間化IATの問題がWeb上という実験環境によるものなのか、それとも非人間化IATそのものにあるのかを検討する必要がある。加えて、実際の運動部員・指導者を対象とし、部活動経験・指導経験が与える影響について検討することで、より精緻に非人間化の影響の有無について検討が可能と考えられる。しかし、現時点においてはコロナウイルスの影響により実験室実験が難しい状況となっている。そこで、今後はより探索的に複数の要因を踏まえたWeb上での実験を中心とした検討を行う。具体的には被害者である運動部員に対する印象の自由記述調査やインタビュー調査を予定している。 ただし、出来る限り実験室実験に近い環境での実験を行う必要もあるため、Zoom等の通信ツールを利用し直接やり取りをしながら非人間化IATの追試実験を行うことも考えられる。年度内にコロナウイルスの影響が納まった場合は対面の実験室実験を行い、対面状況においても潜在的態度の影響が認められない場合には単語の選定のやり直し、もしくはSingle Target IATと呼ばれる対で提示しない方法も検討していく必要があるだろう。
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Causes of Carryover |
本年度はコロナウイルスの影響により予定していた対面実験、および学会参加が困難となったため、次年度使用額が発生している。次年度については計画を変更し、対面実験で行う内容をWeb上での検討に切り替え実施することで使用する。
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Research Products
(1 results)