2020 Fiscal Year Research-status Report
運動のばらつきの特性とその脳内神経基盤の包括的理解
Project/Area Number |
19K20103
|
Research Institution | National Institute for Physiological Sciences |
Principal Investigator |
上原 一将 生理学研究所, システム脳科学研究領域, 助教 (90746661)
|
Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
|
Keywords | 脳波 / 運動制御 / ネットワークフレキシビリティ / 探索的学習 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は,運動のばらつきの原因と考えられている神経活動ノイズについて頭皮脳波を用いて脳活動のばらつきや脳内ネットワークのゆらぎ(ネットワークフレキシビリティー)を定量化し,運動のばらつきの原因となる脳内神経基盤を理解することである。これに加え,運動のばらつきの運動制御機構における機能的意義について運動学習実験を通して理解する。本年度は運動のばらつきの原因となる脳内神経活動すなわち脳活動のばらつきや脳内ネットワークのフレキシビリティーとの関係を明らかにする研究に取り組んだ。本年度前半では本実験に向けての予備実験を行い,フォースセンサを用いた探索的運動学習パラダイムを完成させ,行動データ計測に必要なパラメータや効果サイズを検討した。この予備実験から本実験では25-30名程度の被験者が必要であることを明らかにした。これを踏まえ,本年度後半では本実験を開始し,10名程度の被験者から64チャンネルの頭皮脳波データと行動データを取得した。脳波時系列データを用いて脳波パワーの変化や各チャンネル間の位相同期度を計算し機能的結合の変化を明らかにした。令和3年度は本実験を継続し,被験者数を増やしながら機能的結合データの時系列変化をもとにネットワークフレキシビリティーや脳活動の情報流(トランスファーエントロピー)を求め,行動データとの関係性を明らかにしたい。また,ネットワークフレキシビリティーの個人特性が学習に与える影響についても解析データをもとに明らかにし,両者についての研究成果をまとめていきたい。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度前半はCOVID-19感染拡大に伴う緊急事態宣言で研究活動が止められてしまい,4-5月はデータ計測が行えなかった。しかし,6月に集中的に行動実験のみの予備実験を行うことができ,計測パラメータと効果サイズの設定がスムースに行えたため,年度後半の本実験にスムースに移行することができた。実験参加者希望者も多く集まったため10名程度の被験者を対象にデータ計測を行うことができた。また,緊急事態宣言で研究活動が止められている最中に行動データ,脳波データ解析用のプログラムを作成していたためデータ計測後すぐにデータ解析を行うことができた。新型コロナウィルス感染拡大等研究の障壁となることが多い一年ではあったがデータ計測ができない期間に先行して準備を整えたことにより本年度計画した通り研究を遂行することができた。
|
Strategy for Future Research Activity |
本年度10名程度の計測は終了しており,予備実験から算出したeffect sizeを元にすると25-30名程度からデータを取得する必要があるため残りの20名程度のデータ計測を進める。また,加齢変化とネットワークフレキシビリティーに関連がある新たな仮説が生まれたため,そちらについてもデータ計測を進め,ライフスパンでの運動のばらつきやネットワークフレキシビリティーの変化についても検証し,さらなるエビデンスの構築を目指す。被験者に関しては成人(高齢者含む)被験者の確保は十分にできているため速やかにデータ計測ができると考える。来年度前半中にはデータ計測を行い,年度後半は研究成果をまとめ論文化を進める予定である。
|
Causes of Carryover |
本年度はCOVID-19感染拡大で学会参加の機会がなかったため。次年度はこの繰越金を人件費・謝金等に当てデータ計測を加速する予定である。
|