2021 Fiscal Year Annual Research Report
運動のばらつきの特性とその脳内神経基盤の包括的理解
Project/Area Number |
19K20103
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Research Institution | National Institute for Physiological Sciences |
Principal Investigator |
上原 一将 生理学研究所, システム脳科学研究領域, 助教 (90746661)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 脳波 / 運動制御 / ネットワークフレキシビリティ / 探索的学習 / 加齢 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究のねらいは,頭皮脳波を用いて脳活動や脳内ネットワークのばらつきあるいはゆらぎを定量化する。これに加え,運動のばらつきの運動制御機構における機能的意義について運動学習実験を通して理解することである。さらに脳活動や脳内ネットワークのばらつきの加齢変化についても併せて検討する。 本年度は本実験を行い,若年者と高齢者の2群からデータを得て解析を進めた。具体的には,実験参加者に右手指で視覚運動適応課題を学習してもらい,その最中に63チャンネルの脳波データを記録した。電極ペアからの脳波信号の位相同期性を定量化する位相同期性指標を用いて脳内ネットワークの機能的結合性の時間変化を評価した。そして、ネットワークコミュニティ検出のためのLouvain法を用いて各周波数帯域におけるネットワークの柔軟性を抽出した。 高齢者群では,アルファ帯域の全脳ネットワークの柔軟性が若年者群に比べ有意に低いことがわかった。オンライン学習期間中,若年群は高齢群に比べ学習期間終了時にも有意に長く追跡誤差の減少が持続することがわかった。さらに、LASSO回帰分析により,運動準備中のアルファ帯域のネットワークの柔軟性が若年群では学習終了後10分間の学習保持能力と関連した。一方,高齢者群では成功か失敗かの二値フィードバック信号を提示した後のベータ帯のネットワークの柔軟性が長期的な学習保持能力と関連することが明らかとなった。本研究結果から,脳内ネットワークの柔軟性は運動学習成績を左右する因子であり,加齢によってネットワークの柔軟性は変化することが明らかとなった。
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