2020 Fiscal Year Research-status Report
脂肪酸代謝と心臓ホルモンFGF21に着目した新規の心疾患予防戦略の開発
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19K20107
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Research Institution | Gunma University |
Principal Investigator |
須永 浩章 群馬大学, 大学院医学系研究科, 研究員 (10760077)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 脂肪酸代謝 / 心筋梗塞 / 心不全 / FGF21 / ケトン体 |
Outline of Annual Research Achievements |
我々は最近、急性心筋梗塞患者の超急性期に、肥満症や糖・脂質代謝異常を改善するエネルギー代謝調節因子として知られている線維芽細胞増殖因子 (FGF) 21の血中濃度が、遊離脂肪酸 (FFA)濃度と同様に著明に上昇することを見出した。また、培養心筋細胞 (CM)に飽和脂肪酸であるパルミチン酸・ステアリン酸を刺激することでFGF21の発現増加を認めた。そして、このFGF21の発現上昇には、エネルギー代謝調節因子であるAMPKの活性化や、長寿遺伝子として知られる細胞内栄養センサーSirtuin1の発現上昇が関与することを見出した [Sunaga H et al. Sci Rep. 2019]。さらに、我々は心不全および急性心筋梗塞患者で血中のケトン体濃度が大幅に上昇し、この上昇はFGF21と強く相関することを見出している。 そこで我々は、CRISPR-Cas9システムで作成したFGF21全身欠損マウスを用いて、絶食時の心臓におけるエネルギー代謝因子の解析を行った。その結果、FGF21欠損マウスの心臓では、絶食時に細胞内エネルギー代謝を調節するmTORの発現上昇、および脂肪酸代謝因子PPARαの発現変化が認められた。この発現変化には、FGF21欠損による心筋内の活性酸素種 (ROS)の増加が関与しており、また、酸化ストレス応答因子Nox4や抗酸化因子Nrf2およびcatalaseの発現が上昇することを明らかにした。さらに、培養CMへのケトン体刺激によりFGF21やPPARαの発現が著明に増加し、ケトン体はPPARαのリガンドとして作用することから、ケトン体とFGF21は心臓におけるPPARαおよびmTOR経路を調節している可能性が示唆された。現在、心筋細胞特異的FGF21欠損マウスでの心筋梗塞・心不全病態モデルを作成し、心臓におけるFGF21の役割について検討を行っている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
心筋梗塞・心不全病態モデルマウスにおける心臓の脂肪酸組成およびFGF21発現変化と、病態に関わる因子との関連性について、着実に研究成果が出ている。 また、CRISPR-Cas9システムで作成したFGF21全身欠損マウスについて順調に繁殖ができており、FGF21欠損マウスの絶食時における心臓のエネルギー代謝因子の発現変化について、着実に研究成果が出ている。
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Strategy for Future Research Activity |
今後も、心臓における脂肪酸組成およびFGF21発現変化と心筋梗塞・心不全病態との関連性について、CRISPR-Cas9システムで作成したFGF21全身欠損マウス、およびタモキシフェン誘導性の心筋細胞特異的FGF21欠損マウス (Mhc6-MerCreMer/FGF21 fl/flマウス)での病態モデルや培養心筋細胞を用いた基礎的な検討を行っていく。具体的には、マウスの病理学的変化、左室収縮能、左室拡張能などの機能的変化、エネルギー代謝や酸化ストレスに関与する遺伝子発現などをリアルタイムPCRやウエスタンブロッティングで網羅的に解析し、病態との関連性について検討する。加えて、上記のマウスから心筋細胞、線維芽細胞を初代培養し、FGF21の過剰発現やノックダウン、脂肪酸刺激を行い、脂肪酸・糖代謝および病態関連因子の変化を検討する。さらに、心臓特異的cTNTプロモーター下にFGF21を発現するアデノ随伴ウイルス (AAV)ベクターを作成し、眼窩静脈層より注入することで、マウス心臓特異的にFGF21を発現する。これらのマウスと心臓特異的GFP発現マウスにおける心臓エネルギー代謝の違いを解析する。 また、ケトン体がエネルギー代謝やミトコンドリア機能に関与するFGF21, AMPK, mTORおよびPPARαの発現を調節することで心疾患に対し保護的に作用するとの仮説を立て、この仮説を検討していく。さらに、臨床研究として、急性心筋梗塞および心不全患者の血液サンプルを用いて、脂肪酸分画の測定やFGF21血中濃度と病態との関わりについて、詳細に検討していく予定である。
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Research Products
(15 results)
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[Presentation] Ketone body as a signaling molecule to induce fibroblast growth factor 21:Implication for cardioprotective mechanism in heart failure.2020
Author(s)
Hiroaki Sunaga, Masaru Obokata, Ryo Kawakami, Hidemi Sorimachi, Tomonari Harada, Kuniko Yoshida, Toshimitsu Kato, Noriaki Takama, Norimichi Koitabashi, Tatsuya Iso, Hiroki Matsui, Tomoyuki Yokoyama, Masahiko Kurabayashi.
Organizer
第84回 日本循環器学会学術集会
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