2022 Fiscal Year Research-status Report
エピジェネティックな発現制御に基づく加齢性白内障発症メカニズムの解明
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19K20111
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Research Institution | University of Fukui |
Principal Investigator |
井波 真弓 福井大学, 工学部, 技術職員 (20816839)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | 白内障 / エピジェネティクス |
Outline of Annual Research Achievements |
優れた抗酸化剤として白内障進行を阻害することが知られているピルビン酸の、ガラクトース誘導性白内障への効果を検討した。ピルビン酸の添加により、ガラクトース誘導によって白濁した水晶体の透明度が回復し、治療効果が認められた。この治療効果に寄与する遺伝子を同定するため、マイクロアレイ解析を行ない、61遺伝子を抽出した。このうち49遺伝子について、発現量を定量的に測定するため、RT-qPCRを用いて解析した。測定の結果、マイクロアレイ解析と同様に発現変動する遺伝子は34遺伝子であった。次に、34遺伝子の細胞内での機能を明らかにするため、STRINGを用いてタンパク質間相互作用による機能クラスターを作製した。機能解析により、メタロチオネイン関連遺伝子、及び上皮間葉転換関連遺伝子が見出された。 また、以前のHAT阻害剤やATM 阻害剤を用いた研究の結果から、脂質代謝に関与するPPARに着目した。PPARが糖白内障形成に関与するかを検討するため、PPARアゴニストのガラクトース誘導性白内障治療効果を検討した。その結果、複数のPPARアゴニストが白濁を減少させることを見出した。さらに、この治療効果に寄与する遺伝子を同定するため、マイクロアレイ解析を行ない、141遺伝子を抽出した。このうち107遺伝子についてRT-qPCR解析を行い、白内障治療との関連性の高い48遺伝子を見出した。この48遺伝子についてSTRINGを用いて解析を行った結果、細胞骨格、ヌクレオソーム、ミトコンドリアの構成や機能に関与する遺伝子が見出された。これらの研究成果を論文発表する予定である。 より詳細な生体内での白内障発症メカニズムを調べるために、遺伝的に白内障を発症するICRをモデルとした研究を行った。PPARアゴニスト、ピルビン酸をICRに点眼したところ、皮質混濁が減少し治療効果が確認できた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
糖白内障モデルを用いた研究から、複数の薬剤で治療効果が見られ、それぞれで白内障発症に寄与すると考えられる候補遺伝子を抽出することができた。また、ICRでの点眼実験でも治療効果が見られたので、候補遺伝子探索に進むことができる。さらに、本研究で見出した薬剤が、白内障治療の点眼薬として期待されるため。
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Strategy for Future Research Activity |
ICRを用い、白内障進行の異なる段階で水晶体を取り出してRNA を抽出し、マイクロアレイおよびリアルタイム PCR の解析を行い、候補遺伝子を抽出する。さらに、候補遺伝子に対する阻害剤を用いてモデル動物の水晶体培養実験を行い、下流因子を探索する。 また、ヒトの加齢性白内障サンプルにおける発現変動遺伝子の解析を行う。福井大学医学部眼科学教室との共同研究により、加齢性白内障患者の手術時に採取したサンプルを用いる。糖白内障発症モデルおよびICRモデル実験により抽出した候補遺伝子について、ヒト加齢性白内障でも発現変動が見られるかリアルタイム PCR により確認する。
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Causes of Carryover |
端数が生じたため
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