2019 Fiscal Year Research-status Report
若年ニコチン暴露がもたらす時を超えた食行動変化:報酬系を介した脳内分子メカニズム
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19K20116
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Research Institution | University of the Ryukyus |
Principal Investigator |
山崎 聡 琉球大学, 医学(系)研究科(研究院), 客員研究員 (50622792)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 生活習慣病 / 食習慣・摂食調節 / 脳報酬系 / 糖尿病 / 肥満症 |
Outline of Annual Research Achievements |
受動喫煙に曝された小児は成長期に肥満を来しやすいことが国内外から報告されており(厚生労働省 21世紀 出生児横断調査特別報告2017), 幼若期の環境因子と成人期の肥満症リスクの関連性を解明するライフコース研究が注目されている.マウスを用いた基礎的研究から、幼若期のニコチン暴露が脳内報酬系の失調を介して飲酒量を増加させること、動物性脂肪が報酬系の2型ドパミン受容体遺伝子(D2R)のエピゲノムを介して動物性脂肪依存を来すことが明らかとなっている(Thomas AM et al. Cell Rep 2018, Kozuka C et al. Diabetologia 2017). 機能的MRIを用いた臨床研究では肥満者の脳ではD2Rの発現低下を伴って食後の報酬系の活性化が減弱しており, 報酬系の調節不全は体重増加の予測因子となる可能性が示唆されている (Stice E et al. J Neurosci 2010).
これらを踏まえ, 本研究では幼若期マウスに対するニコチン暴露が成獣期の食行動や報酬系機能に及ぼす影響を検討した. 4週齢C57BL/6J雄性マウスに浸透圧ポンプを装着し, ニコチンを2週間持続投与した. 9週齢までは通常餌, 10週齢から高脂肪餌を与えて体重, 摂餌量を評価した. 結果は幼若期ニコチン暴露群では対照の生食群と比べて成獣期の高脂肪餌下の体重, 摂餌量、血糖値が増加し(8.7%、8.0%、21.3%、p<0.05), 線条体のD2RのmRNAや蛋白発現が低下していた(p<0.05、p<0.05). 幼若期のニコチン暴露が報酬系機能分子の発現レベルを変化させ, 成獣期の高脂肪食性肥満を増悪させる可能性が考えられた. 幼若期の環境が肥満症・糖尿病発症リスクを高める新規の脳内分子機構を足掛かりとして、生活習慣病の新たな戦略の構築につながることが期待される.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
まずは幼若期マウスに対するニコチン暴露が成獣期の食行動や報酬系機能に及ぼす影響を検討し、幼若期ニコチン暴露群では対照の生食群と比べて成獣期の高脂肪餌下の体重, 摂餌量、血糖値が増加し(8.7%、8.0%、21.3%、p<0.05), 線条体のD2RのmRNAや蛋白発現が低下していることを確認した(p<0.05、p<0.05).
特許庁へ以下を特許出願した。 特願2019-165406, 2019年9月11日, 発明の名称: 受動喫煙に起因する小児肥満の予防又は治療剤
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Strategy for Future Research Activity |
成獣期ニコチン暴露モデルとして8週齢マウスを用いて同様の検討を行い、幼若期暴露の結果と比較する。
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Causes of Carryover |
実験を遂行し、併せて学会発表をすすめてきた。これまでに幼若期マウスの検体採取、線条体D2Rのタンパク発現レベル、mRNA発現レベルを解析し、その他の脳検体は冷凍保存してある。今後の使用計画としては、成獣期マウスの解析に用いる予定である。得られた結果から、幼若期暴露と成獣期暴露が与える成獣後の高脂肪餌の摂餌量、体重の推移、線条体D2Rのタンパク発現レベル、mRNA発現レベルの違いについて、結果をまとめていく。
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