2019 Fiscal Year Research-status Report
ナイアシン栄養状態の変動が代謝調節にもたらす影響の網羅的解析
Project/Area Number |
19K20117
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Research Institution | The University of Shiga Prefecture |
Principal Investigator |
畑山 翔 滋賀県立大学, 人間文化学部, 講師 (70825801)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | ナイアシン / トリプトファン‐ナイアシン転換経路 |
Outline of Annual Research Achievements |
ナイアシン(ニコチンアミド,ニコチン酸)はNAD,NADPとして酸化還元反応を始めとする500以上もの生化学反応の補酵素となるほか,生体内で重要なタンパク質のADPリボシル化やサーチュインの基質として情報伝達や遺伝子の発現・修復に関与するなど,生命維持の根幹に深く関与している.ナイアシンの欠乏状態では,古典的な欠乏症のペラグラを発症し,近年わが国においては慢性的なアルコール摂取によるペラグラ様症状が注目されている.その一方で,ナイアシンが生体の生化学反応や遺伝子発現,代謝経路におよぼす影響といった,分子レベルでの作用機構については未だ不明な点が多い. ナイアシンは必須アミノ酸のトリプトファンから生合成され,このトリプトファン由来のナイアシン供給は,生体の必要量にほぼ等しい.これまで,このトリプトファン-ナイアシン転換経路によるナイアシン供給の影響を排除することができないため,生体における「真」のナイアシン栄養状態が生理機能や代謝機構におよぼす影響を明らかにすることが困難であった. 近年,トリプトファン-ナイアシン転換経路の律速酵素を欠失したマウスをナイアシン欠食で飼育することにより,ナイアシン欠乏モデル動物が作成された.このモデル動物を用いることにより,ナイアシン栄養状態に関連する因子,さらには「真」のナイアシン栄養状態が遺伝子発現や生化学反応,代謝経路におよぼす影響を解明することが可能である. 申請者は栄養生化学,生理学,ビタミン学および臨床栄養学の観点から,ナイアシン栄養状態が遺伝子発現の制御や代謝機能の調節におよぼす影響について網羅的に解明することを目指す.本年度は,トリプトファン-ナイアシン転換経路欠失マウスに,さまざまな量のナイアシン含有食を与え,血液および尿中のナイアシン栄養指標を測定することにより,マウスにおける正確なナイアシン必要量を明らかにする.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本年度は,トリプトファン-ナイアシン転換経路欠失マウスであるキヌレニン-3-モノオキシゲナーゼ欠失(KMO-KO)マウスに,さまざまな量のナイアシン含有食を与え,マウスにおける正確なナイアシン必要量を求めた.しかし,当初想定していたよりもナイアシン必要量が低値であった.そのため,ナイアシン必要量の範囲を再度設定して検討する必要があったため,正確なナイアシン必要量の決定に時間を要してしまった.
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Strategy for Future Research Activity |
今年度,KMO-KOマウスにおける正確なナイアシン必要量を明らかとすることができたため,今年度はナイアシン栄養状態の悪化が肝臓などにおける遺伝子発現や代謝経路におよぼす影響について明らかとしていく. また,同時に今年度明らかとした必要量のナイアシンを与えたKMO-KOマウスにエタノールを摂取させ,アルコール摂取がナイアシン栄養状態におよぼす影響を明らかにしていく.
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Causes of Carryover |
分析に用いるHPLCの修理費として予算を計上していたが,修理の必要がなかったため,次年度の物品費と合わせて使用する予定である.
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Research Products
(2 results)