2020 Fiscal Year Research-status Report
個々人の体内時計制御に基づくオーダーメイド型の食事内容の提案と臨床応用
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19K20126
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
高橋 将記 東京工業大学, リベラルアーツ研究教育院, 准教授 (30711189)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 体内時計 / 糖尿病 / 糖代謝 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題では、朝型・夜型などのクロノタイプ、社会的時差ボケ、時計遺伝子発現リズムの3つの観点から生体リズムを評価し、個人や対象者特性ごとでの食後代謝を比較することとしている。さらに、糖尿病リスクの高い高齢者あるいは糖尿病予備軍への臨床応用を目指すこととしている。初年度は、若年者を対象に朝型・夜型質問紙ならびに時計遺伝子発現リズムで生体リズムを評価し、朝型群ならびに時計遺伝子発現のピーク時刻が早い群では、朝食時における食後インスリン濃度が高かった。これらの結果は、クロノタイプや時計遺伝子発現による生体リズムの違いにより食後糖代謝が異なることを示している。今年度は、新型コロナウイルスによるヒト試験の制限により高齢者や糖尿病予備軍を対象とした研究実施は難しかったため、若年者を対象とした食事タイミング・絶食時間と食後糖代謝の関連を検討している。その結果、夜間の絶食時間が長いヒトほど時計遺伝子発現リズムで評価した生体リズムが良好であること、また起床後から朝食時間まで時間が短いことと生体リズムが良好であることが関連するなど食事タイミングと生体リズムの観点からの知見が得られている。また絶食時間と糖代謝への影響を検証した結果では、夜間の絶食時間が長いことが朝食時における食後血糖値およびインスリン濃度が低いことと関連することが示されている。次年度は、高齢者を対象とした生体リズムと糖代謝の関連についても検討するための準備を進める。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
新型コロナウイルスの影響により、ヒト試験、特に高齢者や糖尿病予備軍を対象とした臨床試験の実施は困難であった。一方で、若年者を対象に食事タイミング・絶食時間と食後糖代謝の関連を検証し、個々人の体内時計に基づく栄養・食生活の提案に向けた検証を行った。 健常な若年成人38名(男性21名・女性17名)を対象とし、研究デザインはランダム化クロスーバー試験として試験を実施している。各被験者の試行は、朝食試行および夕食試行の2試行とし、各試行の食事負荷量は、推定エネルギー量の40%、主要栄養素のエネルギー比率は炭水化物70%、脂質15%、タンパク質15%とした。今回の試験食のエネルギー量ならびにエネルギー比率は、我々の先行研究に基づき設定し、食後血糖値・インスリン濃度の上昇を十分に確認できる食事負荷量とした。本研究における朝食試行は午前9時、夕食試行は17時から開始した。それぞれの試行において空腹時、食後30分、食後60分、食後120分、食後180分に採血を行い、血液分析項目としてグルコース、インスリンを評価している。各試行において基本情報として、身体測定、実験前日からの食事記録、就寝・起床時間、習慣的な就寝・起床時間、身体活動量(活動記録)を評価している。また生体リズムの評価指標は朝型・夜型質問紙、時計遺伝子発現(男性のみ)、社会的時差ボケの評価とし、食後代謝との関連を検討している。 現在の主な結果として、夜間の絶食時間が長いことや起床から朝食までの時間が短いことと生体リズムが良好であることと関連することが示唆されている。また夜間の絶食時間が長いことは朝食時における食後血糖値やインスリン濃度の上昇と負の相関を示すことを明らかにしている。これらの結果は、夜間の絶食時間を確保することが生体リズムや糖代謝を良好に保つ上でも重要であることを示唆している。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究計画としては、若年者のn数を追加するとともに、当初の予定より遅れている高齢者や糖尿病予備群を対象とした試験を実施していく。特に今年度も引きつづき新型コロナウイルスの影響が懸念されることから、日常生活下での評価も検討している。従って、健常若年者で実施した内容に加え、24時間随時血糖値を前日から実験終了翌日(3日間)評価する予定とする。具体的な内容は、基礎疾患や服薬のない高齢者15名を対象に、朝食試行、昼食試行および夕食試行の3試行とする。各試行の食事負荷量は、推定エネルギー量の40%とし、炭水化物70%、脂質15%、タンパク質15%のエネルギー比率とする。本研究における朝食試行は午前9時、昼食試行は12時、夕食試行は19時から開始予定とする。それぞれの試行において空腹時、食後30分、食後60分、食後120分、食後180分に採血を行い、血液分析項目としてグルコース、インスリン、インクレチン、中性脂肪、遊離脂肪酸濃度を評価する。なお上述の通り、24時間随時血糖値を前日から実験終了翌日(3日間)評価する。各試行において基本情報は若年者の研究と同様とし、身体測定、実験前日からの食事記録、就寝・起床時間、習慣的な就寝・起床時間、身体活動量(活動記録)を評価する。また事前調査における生体リズムの評価指標は朝型・夜型質問紙、時計遺伝子発現の評価、社会的時差ボケの評価とし、食後代謝との関連を検討していく予定とする。
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Causes of Carryover |
前年度の成果発表費用、また新型コロナウイルスの影響により実施が遅れている研究実施費用として使用するため。
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