2019 Fiscal Year Research-status Report
Creation of a novel dermatitis treatment strategy with Selenbp1
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19K20131
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Research Institution | Daiichi University, College of Pharmaceutical Sciences |
Principal Investigator |
古賀 貴之 第一薬科大学, 薬学部, 助教 (80733279)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | Selenbp1 / メチオニン / アレルギー性皮膚炎 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、アレルギー原因物質への接触によって生じる皮膚炎(アレルギー性皮膚炎)に対する新規治療戦略の創成を目指し、メチオニンの摂取によるアレルギー性皮膚炎の軽減効果に着目した検討を実施している。現在までに、このメチオニンによるアレルギー性皮膚炎軽減効果はマウスの種類によって効果が大きく異なる(マウス系統差)ことが示唆されている。さらに、そのマウス系統ごとのアレルギー反応に対する共通性や非共通性の解析より、そのマウス系統差にはSelenbp1というタンパク質が関与していることが疑われている。そこで当該年度では遺伝的にこのタンパク質を欠損したマウスを使って、アレルギー性皮膚炎そのものやメチオニンの皮膚炎軽減作用へのSelenbp1の作用について観察を行った。 Selenbp1を欠損していない通常マウス(野生型マウス)およびSelenbp1欠損マウスでは、アレルギー性皮膚炎の発症や重症化の程度には差異が観察されなかった。これより、Selenbp1タンパク質はアレルギー性皮膚炎の発症や進行機構そのものには関連がないことが示唆された。 メチオニンは、Selenbp1タンパク質を有する野生型マウスのアレルギー性皮膚炎の症状を軽減しなかった。一方、欠損マウスでは、メチオニンはアレルギー性皮膚炎の症状を軽減した。Selenbp1タンパク質欠損によりメチオニンの皮膚炎軽減効果が発揮されたことから、Selenbp1タンパク質はメチオニンによるアレルギー性皮膚炎の軽減効果を阻害することが見いだされた。 以上の結果より、アレルギー性皮膚炎の新規治療戦略の創成において、Selenbp1タンパク質は、その働きを阻害することでメチオニンの皮膚炎軽減効果を増強するという、間接的な治療戦略の標的となり得ることが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
Selenbp1がアレルギー性皮膚炎やメチオニンによる皮膚炎軽減効果に及ぼす基礎的データをおおよそ得ることができた。しかし、メチオニンによるアレルギー性皮膚炎の軽減効果の評価法のうち、組織学的評価やPCR法などの生化学的パラメータに関しては実施しているものの、サイトカイン血中濃度など血液学的パラメータの評価には至っていないため、多角的評価の観点からも、この点の評価は実施する必要があると思われる。 また、多系統のマウスを用い、Selenbp1の発現制御機構に関して、先行して検討に着手している。
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Strategy for Future Research Activity |
メチオニンによるアレルギー性皮膚炎軽減効果の強度のマウス系統差とアレルギー性皮膚炎による肝臓Selenbp1タンパク質発現抑制のマウス系統差には相関関係がある。そこで、メチオニンによるアレルギー性皮膚炎軽減作用が認められたマウス系統(以下、感受性マウス)および軽減作用が認められなかったマウス系統(以下、非感受性マウス)を比較検討することで、Selenbp1発現制御に関与する因子の探索を行う(それぞれ3系統ずつを予定)。感受性および非感受性系統のマウスを用いてアレルギー皮膚炎モデルを作製し、各モデルマウスおよび非発症対照マウスより肝臓を採取し、肝臓内の成分 (特に低分子化合物や炎症関連タンパク質)発現量の測定により、アレルギー性皮膚炎により変動する生体内因子の探索を行う。また、血液成分についても同様な検討を行う。これらの検討より得られるアレルギー性接触皮膚炎発症により変動する生体内因子のうち、感受性マウス系統特異的もしくは非感受性マウス系統特異的な生体内因子の変動を解析することにより、Selenbp1発現制御に関与する因子の探索を行う。
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Causes of Carryover |
当初の予定よりも動物実験にかかる費用および学会参加に係る旅費を安く抑えることができたため次年度使用額が生じた。次年度は実施予定の動物実験が本年度より多く、今まで以上に動物実験に係る必要経費が増加する。そのため、必要経費として計上した予算の全てをこれら動物実験に係る消耗品費として使用する予定である。
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