2020 Fiscal Year Research-status Report
Development of prophylactic and antidepressant agents that target the BDNF expression in peripheral tissues
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19K20134
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Research Institution | Nagasaki International University |
Principal Investigator |
中島 健輔 長崎国際大学, 薬学部, 助教 (90762162)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | うつ病 / 脳由来神経栄養因子(BDNF) / 和漢薬 / 未精製小麦 / 亜鉛 |
Outline of Annual Research Achievements |
神経細胞の新生・成長・分化を担う脳由来神経栄養因子(BDNF)の脳内における増加は、うつ病の予防および改善につながると考えられている。BDNFは脳だけでなく末梢組織においても産生され、末梢から中枢へと移行することが知られているため、末梢組織でBDNFの産生を促進する物質は、血中ひいては脳内BDNF量の増加をもたらし、うつ病の予防・改善効果を示すと考えられる。この着想に基づき研究代表者は、ヒト腎がん細胞ACHNおよびヒト肺がん細胞A549のBDNF産生能を明らかにし、これらの細胞を用いてうつ病予防・改善薬のシーズを見出すべくBDNF産生促進物質の探索を行ってきた。 2020年度は、これらの細胞を用いて、和漢薬および食品を対象としてスクリーニングを行った。ACHN細胞を用いた検討では、四逆散、人参養栄湯、補中益気湯などの漢方薬、さらに、それらの漢方の構成生薬であるオンジおよびサイコのBDNF産生促進作用を明らかにした。さらに、ラットへの四逆散の経口投与が血中BDNF濃度を上昇させることを見出し、ACHN細胞を用いたBDNF産生促進物質の探索の有用性を確認した。 A549細胞を用いた検討では、全粒粉小麦および小麦ふすまのBDNF産生促進作用を明らかにした。さらに、精製された小麦ではその作用は見られないことを確認し、未精製小麦の精製小麦に対する有用性を示した。未精製の小麦は精製小麦に比べ、BDNF上昇作用の報告がある亜鉛およびマグネシウムの含有量が多いことから、A549細胞のBDNF産生に及ぼすこれらのミネラルの影響を調べ、未精製小麦のBDNF産生促進作用に亜鉛が関与している可能性を示した。 現在、これまでに見出した和漢薬および食品を用いて、活性成分の単離・同定を進めているところである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ACHN細胞を用いた検討では、四逆散を含む多くの和漢薬のBDNF産生促進作用を明らかにした。さらに、四逆散の経口投与により、ラット血中BDNF濃度が上昇することも確認できた。A549細胞を用いた検討では、未精製小麦のBDNF産生促進作用を明らかとし、その成果はJournal of Oleo Science誌にacceptされた。 上記の成果を得たことから、本研究はおおむね順調に進展していると思われる。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでに見出したBDNF産生促進作用を有する和漢薬および食品のうち、効果の高かったものを用いて活性成分の単離・同定を行う。見出された活性成分のBDNF産生促進機序の解明を行う。さらに、高いBDNF産生促進作用を示したものから順次、動物実験に供し、そのうつ病予防・改善効果を検討する。 ACHNおよびA549細胞を用いたBDNF産生促進物質の探索は、2021年度も引き続き行う予定である。
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Research Products
(3 results)