2019 Fiscal Year Research-status Report
高齢者のワーキングメモリを高める運動条件とその脳内機構の解明
Project/Area Number |
19K20138
|
Research Institution | Physical Fitness Research Institute, Meiji Yasuda Life Foundation of Health and Welfare |
Principal Investigator |
兵頭 和樹 公益財団法人明治安田厚生事業団体力医学研究所, その他部局等, 研究員(移行) (60782563)
|
Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2021-03-31
|
Keywords | 高齢者 / 運動 / 一過性 / ワーキングメモリ / 前頭前野 / 近赤外線分光法 |
Outline of Annual Research Achievements |
2019年度は、健常高齢者に対して一過性の中強度運動がワーキングメモリに与える影響とその脳内メカニズムを、近赤外線分光法(fNIRS)を用いて予備的な検討をおこなった。 実験参加者は健常高齢者6名 (70.3±3.1歳、女性4人)で、中強度(換気性作業閾値)の自転車運動をおこなう条件と、運動せずに安静を保つ対照条件をおこなった。どちらの条件も、運動または安静の前後にワーキングメモリを評価する言語性N-back課題をおこない、その際の前頭前野の脳活動を近赤外線分光法装置(fNIRS)により測定した。N-back課題はワーキングメモリの負荷別に0-back、2-back、3-backの3条件で構成され、それぞれの負荷条件で反応時間および正解率を評価した。fNIRSは前頭前野をおおうようにホルダーを設置し、前頭前野背外側部 (DLPFC)、腹外側部(VLPFC), 前頭極 (FPA)に位置するチャンネルをそれぞれの部位別に統合して解析をおこなった。 その結果、運動条件では対照条件に比べて2-backの反応時間および3-backの正解率が高まる傾向が見られた。また、2-back条件中の左脳のDLPFCの活動、および3-back条件中の左脳のDLPFC、VLPFCの活動が対照条件に比べて運動条件において高まる傾向が見られた。以上の結果から、一過性の中強度運動はワーキングメモリの負荷が高い条件のパフォーマンスを高め、その背景としてワーキングメモリや言語処理に関わる左のDLPFCおよびVLPFCの活動増加が関与している可能性がある。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本年度は一過性の低強度運動と中強度運動が高齢者のワーキングメモリに与える影響を検討することを目指したが、高齢者のワーキングメモリを測定する認知課題設定や脳活動の分析方法の検討で時間がかかり、中強度運動の検討しかできなかった。以上の点から、やや遅れていると判断した。
|
Strategy for Future Research Activity |
現在、新型コロナウイルスの影響で高齢者の測定が困難になっている。コロナの感染状況が落ち着いたら、感染症予防対策を立てて、一過性の低強度・中強度運動の効果検証を実施する予定である。また、3ヶ月間の運動教室の効果を検討予定であったが、集団での運動教室が難しいため、home-based exerciseの効果検証に変更予定である。
|
Causes of Carryover |
本年度は、脳機能イメージング装置等の大型機器の点検で問題がなかったことから消耗品費や物品費が少なく、計画していた国際学会への不参加や、実験ができなかったことによる旅費、人件費・謝金が少なかったことから、次年度使用額が生じた。 次年度は、実験機器の整備として脳機能イメージング装置、運動負荷試験装置、心電計などの消耗品購入、home-based exerciseを実施、評価するための整備(タブレット、ウェアラブルデバイス)分析ソフトウェア(MATLAB、SPSS)の購入、実験をおこなう際の参加者への謝金、論文投稿費等に使用予定である。
|