2019 Fiscal Year Research-status Report
大学生におけるLDL-コレステロールの健診スクリーニングの意義
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19K20142
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
岡崎 佐智子 東京大学, 保健・健康推進本部, 助教 (30648720)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 健診スクリーニング / 家族性高コレステロール血症 / 早期診断 / 若年成人 / 診断基準 / LDL-コレステロール |
Outline of Annual Research Achievements |
家族性高コレステロール血症ヘテロ接合体(FH(hetero))は、LDL-コレステロール(LDL-C)高値により心血管病(CVD)ハイリスクとなる高頻度な(200-250人に1人)単因子遺伝性疾患であり、CVD予防のためには早期診断と早期治療が望ましい。学生健診でも同頻度と考えられるが、20歳前後の若年成人における診断基準は確立されておらず、低診断が問題となっている。その克服には若年成人でのLDL-Cの健診スクリーニングが有用と考えられるが、その有効性はこれまで検証されていない。本研究では、若年成人(特に大学生)でのFH早期診断のための効果的な方策を明らかにするため、健診由来の18-30歳の高LDL-C血症患者(LDL-C≧160mg/dl)を対象に、以下の検討を行う。若年成人での、1)健診高LDL-C血症におけるFH(FH原因遺伝子(LDLR、PCSK9)変異陽性)の頻度を明らかにする。若年成人FHの、2)臨床的特徴を明らかにする、3)現在の診断基準の感度を明らかにする、4) 3)の感度が低い場合は新たなFH診断基準を提案する。現時点では、対象者のうち、1)約40%にFH原因遺伝子変異を認め、FH変異陽性率は非肥満でさらに高かった。2)FH変異陰性群では生活指導によりLDL-C値が改善することが多く、FH変異陽性群ではLDL-C値が持続高値となることが多かった。3)現在の国内外(日本動脈硬化学会、Dutch Lipid Clinic Network Criteria)の診断基準でのFH変異陽性群の診断感度はいずれも30%未満と低かった。今後は、さらに症例数を増やし、これらの知見を検証、確立、若年成人FHにおける最適な診断基準を検討、学生健診におけるLDL-Cスクリーニングの意義を明らかにし、FHの早期診断からのCVD予防のための効果的な方策を提案していきたい。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
学生の生涯にわたる健康な生活と生産的な活動を支援するのは大学の責務であり、本研究は、学生健診におけるLDL-Cスクリーニングの意義を明らかにし、FHの早期診断からのCVD予防のための効果的な方策を提案することを目的としている。具体的には、1)若年成人での健診高LDL-C血症におけるFH(FH原因遺伝子(LDLR、PCSK9)変異陽性)の頻度を明らかにする。2)若年成人FHの臨床的特徴を明らかにする。3)若年成人FHの現在の診断基準に基づく診断感度を明らかにする。4) 3)の感度が低い場合は、若年成人FHの新たな診断基準を提案することを目的としている。これまでの症例にこの1年間にリクルートした症例を追加し、89症例について、遺伝子解析(FH原因遺伝子(LDLR、PCSK9)の全蛋白翻訳領域のサンガーシークエンスなど)、臨床情報の収集、およびこれらを元にした統計解析を完了し、上記結果を得て、国内学会において学会報告した。当初の計画通り、今後はさらに症例を追加してこれらの知見を確立していく予定である。以上から、本研究課題はおおむね順調に進展していると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの検討から、健診由来の18-30歳の高LDL-C血症患者(LDL-C≧160mg/dl)を対象として、1)若年成人での健診高LDL-C血症におけるFH(FH原因遺伝子(LDLR、PCSK9)変異陽性)の頻度は約40%と高頻度であること、2)特に肥満がない場合には、FH変異陽性率がさらに高いこと(約47%)が分かった。これらの結果から、FHの早期診断・早期治療のために、若年成人における健診でのLDL-C測定が有用であることが示唆される。さらに、3)現在の国内外(日本動脈硬化学会、Dutch Lipid Clinic Network Criteria)の診断基準では、若年成人のFH変異陽性群の診断感度はいずれも約30%未満であり、現在の診断基準は若年成人においては低感度であることがわかり、その適用は低診断(現在の日本における診断率は1%未満と言われている)につながる可能性が示唆された。また、若年高LDL-C血症の臨床的特徴として、FH変異陰性群では生活指導によりLDL-C値が改善することが多く、FH変異陽性群ではLDL-C値が持続高値となることが多いことも分かってきた。本研究課題は、1)若年成人での健診高LDL-C血症におけるFH(FH原因遺伝子(LDLR、PCSK9)変異陽性)の頻度を明らかにする、2)若年成人FHの臨床的特徴を明らかにする、3)若年成人FHの現在の診断基準に基づく診断感度を明らかにする、4) 3)の感度が低い場合は、若年成人FHの新たな診断基準を提案することを目的としている。若年成人高LDL-C血症におけるFHの頻度、若年成人における健診でのLDL-C測定の意義を確立するためには、今後さらに症例数を増やし、これらの知見を検証、確立するとともに、若年成人FHにおける最適な診断基準を検討する必要があり、これらについて当初の予定通り継続して進める。
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Research Products
(3 results)