2019 Fiscal Year Research-status Report
ミニ腸を用いたNa輸送体のカップリングパートナーの生理学的意義の解明
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19K20152
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Research Institution | University of Shizuoka |
Principal Investigator |
石塚 典子 静岡県立大学, 食品栄養科学部, 助教 (30440283)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | ミニ腸 / Na輸送体 / Cl輸送体 / カップリング |
Outline of Annual Research Achievements |
消化管からのNaCl吸収機構に関しては、Na輸送体とCl輸送体がカップリングしていると考えられている。Na輸送体は、小腸・大腸いずれもNHE3であることが示されているが、Cl輸送体に関しては、小腸ではPAT1、大腸ではDRAと異なる。また、申請者らは、小腸では、Na輸送体が、パートナーを替え栄養素輸送体ともカップルすることを示している。しかし、Na輸送体のカップリングパートナーが異なる理由や、カップリング様式の分子機構、更にそれらが栄養素とどのように相互作用するかは全く知られていない。現在までに消化管のNaCl吸収機構に関する研究は動物レベルと細胞レベルで行われてきているが、多くのデメリットがあった。そこで、本研究では、人為的に創出された「器官に類似した組織体」であるオルガノイドを確立し、腸管各部位でのNaCl吸収機構を解明することを目的とした。 オルガノイドのmRNA発現を比較したところ、腸管上皮幹細胞マーカーはいずれの部位でも幹細胞スフェロイドでは濃縮され,分化誘導した細胞群では検出されず,腸上皮に分化していることが示唆された。NHE3とDRAは幹細胞スフェロイドでは発現が大きく低下し,分化誘導した細胞群では発現が増加し,ネイティブ組織の絨毛並びに表層細胞様に分化していることが示唆された。Claudin-15では小腸では分化後にmRNA発現が高くなっていたが,盲腸,大腸由来の幹細胞では発現が増加しなかった。免疫染色では,NHE3はいずれの部位でも微絨毛様構造状に観察された。DRAは,盲腸では微絨毛様構造に高発現していた,近位大腸では,核近傍と思われる場所に発現していた。トランスウェル上に分化誘導した単層腸オルガノイドを用いてバリア機能を評価したところ、ネイティブ組織とは異なり、単層腸オルガノイドでは,近位よりも遠位大腸で経上皮コンダクタンスが上昇する傾向が観察された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究では、上皮細胞間の傍細胞経路のNa透過性を含めた、消化管のNaCl吸収機構を明らかにすることを目的とし、小腸および大腸より、オルガノイドを確立し、消化管のNa輸送体、Cl輸送体のカップリング機構を解析する予定であった。しかし、オルガノイド単層上皮および幹細胞スフェロイドの安定的な作成と発育向上のため、培養条件の再考を優先的に行なったことで、いくつかの実験が行えなかった。培養条件の再検討により、小腸、大腸の単層腸オルガノイドがこれまでよりも安定に作成できるようになり、小腸では絨毛上皮細胞様、大腸では表層上皮細胞様の単層腸オルガノイドに分化していることが示唆された。
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Strategy for Future Research Activity |
オルガノイドの単層オルガノイド上皮が確立できたので、今後は単層オルガノイドを用いて機能的検討を進める。具体的には、単層上皮をUssing チャンバーに装着し、22Naフラックスならびに36Clフラックスを測定する。また、リンゲルからHCO3イオンやClイオンを除くことでCl輸送体を抑制した際の22Naフラックス、または、NHE3特異的抑制剤等を添加することでNHE3を抑制した際の36Clフラックスを測定し、各輸送体のカップリングを検討する。
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Causes of Carryover |
オルガノイド単層上皮および幹細胞スフェロイドの安定的な作成と発育向上を目的として、培養条件の再考を優先的に行なったことで、いくつかの実験が行えなかったため、次年度へ繰り越す予算が生じた。次年度に、今年度行えなかった実験を実施するために、繰り越した予算を使用する予定である。
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