2020 Fiscal Year Research-status Report
メタボローム解析による生活習慣病予防のための客観的な食事調査方法の確立
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19K20153
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Research Institution | The University of Shimane |
Principal Investigator |
多々納 浩 島根県立大学, 看護栄養学部, 助教 (60825082)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 食生活 / メタボロミクス / 栄養学 / バイオマーカー |
Outline of Annual Research Achievements |
生活習慣病を予防するために食生活を振り返ることは重要であるが、食事調査方法は記憶や申告に依存する主観的評価が主流であり、正確に食習慣を把握することは困難であった。食事と健康状態の関係を明らかにするためには、客観的な指標による正確な食事調査方法を確立することが必要である。 我々は当該目的を達成するために、健常者を対象とした食品負荷試験により、生体試料中で特異的に変動する代謝物の経時的な変動について検討した。対象は、健康成人男性8名(年齢:23.9±1.1歳、BMI:21.1±2.6kg/m2)であり、無作為クロスオーバーにて18食品および4飲料を単回摂取した。血漿は食前および食後2時間後、尿は食前及び食後2、4時間後に採取し、CE-TOFMSによるメタボローム解析を行った。肉類(牛肉、豚肉、鶏肉)および魚類(サバ、サケ)の摂取による代謝物の変動を比較した。OPLS判別分析を行ったところ、肉および魚摂取によって血漿および尿中代謝物のいずれも代謝物プロファイルの分離に寄与する物質が存在しており、肉および魚摂取により反応性の異なる代謝物が存在することが考えられた。分離に寄与した代謝物について、食前と食後の濃度差や、摂取した食品間の差を詳細に検討したところ、数種類の代謝物は血漿および尿中代謝物のそれぞれで、肉または魚摂取により食後に有意に上昇し、摂取した食品間で濃度に有意差が見られた。ROC曲線によって肉または魚摂取の予測能を評価したところ、カルノシンやTMAOなどの数種類の代謝物は高性度の予測能を示した。したがって、血漿や尿中代謝物によって肉または魚摂取の評価が可能であることが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
2020年度は、先行研究での食品負荷試験の試料を元に解析を行った。18食品および4飲料を使用した食品負荷試験から得た代謝物のデータから、炭水化物源3種(米、麦、パン)やタンパク質源11種(牛肉、豚肉、鶏肉、サバ、サケ、いか、たこ、えび、大豆、豆腐、卵)について特徴を捉えようと解析を進めていったが、良好な結果が得られなかった。条件や比較対象などを吟味し、解析の試行回数を増やすことが重要であるため、次年度も継続して解析を行う予定である。また、肉摂取と魚摂取については、代謝物を比較することで各々の特徴が確認されたことから、論文の投稿準備をしている。
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Strategy for Future Research Activity |
2021年度は、18食品および4飲料を使用した食品負荷試験から得た代謝物のデータから更に解析を行う予定である。生じた食品摂取バイオマーカー候補の代謝物について追加実験を行う場合は、マウス等の動物を用いる予定である。
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Causes of Carryover |
新型コロナウイルスの感染拡大の影響を受け、新たな臨床サンプルを追加することが難しいため、計画を変更し代謝物測定委託費が不要となった。また、参加を予定していた学会に参加できず、学会参加費や旅費等が不要となった。 2021年度は、次年度請求した分をあわせてメタボロミクス関連物品費や論文投稿費などに使用する予定である。
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