2019 Fiscal Year Research-status Report
CKDにおける脂肪酸代謝に着目したPEW発症機序の解明と食事療法の開発
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19K20167
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Research Institution | Konan Women's University |
Principal Investigator |
伊美 友紀子 甲南女子大学, 医療栄養学部, 助手 (60823979)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 慢性腎臓病 / 脂肪酸 |
Outline of Annual Research Achievements |
慢性腎臓病(CKD)におけるProtein-Energy Wastingの発症メカニズムの解明と食事療法の開発を目的とし、CKDモデル動物の作製と脂肪酸代謝の変動について解析を行った。雄性wistarラットにアデニンを混餌投与しCKDモデルを作製した後、脂質量の異なる餌を30日間与え体重変動や組織重量を検討した。アデニン投与により、CKD群では体重の著しい減少がみられ、その後の試験食期間では摂食量に差はなかったが、普通食群に比し高脂肪食群で体重増加量が増加する傾向があった。一方精巣上体及び鼠径部の白色脂肪組織重量、肝重量、腓腹筋及びヒラメ筋の筋重量はCKD群で減少していたが、脂質摂取量による差異はみられなかった。腎機能マーカ―である血漿中クレアチニン濃度とリン濃度はコントロール群に比しCKD群で増加していたが、脂質摂取量による影響は受けなかった。血漿中のグルコース、トリグリセリド、遊離脂肪酸値にアデニン投与による影響はみられなかった。GC-MS解析を行ったところ、一部の飽和脂肪酸はCKD群の白色脂肪組織と血漿で増加していた。一価不飽和脂肪酸はCKD群の肝臓、腓腹筋、血漿で減少し、さらに高脂肪食摂取群で低値を示した。リノール酸代謝産物はCKD群の白色脂肪組織と血漿で高値を示したが、血漿においては高脂肪食摂取による減少がみられた。以上のことから、CKDにおいて全身での脂肪酸代謝が変動し、高脂肪食摂取は、これらの変動を一部是正または増大させることが確認された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
CKDモデル作製に用いた高濃度アデニン含有飼料により、CKD群の死亡率が高く、予定していた実験期間を短縮せざるを得なかった。そのため既知のCKDモデル動物の表現型と異なる結果が得られており、Protein-Energy Wastingの発症を評価するには不十分であった。また、十分なデータ数を得られなかった実験があったことから、再度初年度行った実験を行う必要がある。
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Strategy for Future Research Activity |
CKDモデル動物の作製法を再検討し、飼料中の脂肪酸の量と質の変更によるProtein-Energy Wasting発症への効果を検討する。具体的には体重、組織重量、血漿中糖脂質代謝マーカー、血漿及び各組織の脂肪酸分析、これらに関連する遺伝子及びタンパク質の発現解析等を行う。また、培養細胞を用い、変動が見られた脂肪酸が与える影響について検討する。
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Causes of Carryover |
本年度行った動物実験は計画より少ない期間と動物数での実施となったため、消耗品の消費が抑えられ、また一部予定していた実験が延期となったことにより使用経費が予定より少なくなった。本年度予定の実験は次年度に行う予定であるため、その試薬や消耗品の購入費として使用する。
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