2019 Fiscal Year Research-status Report
Elucidation of molecular basis of glucotoxicity in the immune system and clinical application
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19K20170
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Research Institution | The Tazuke Kofukai |
Principal Investigator |
岩崎 順博 公益財団法人田附興風会, 医学研究所 第3研究部, 研究員 (30807087)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 高血糖毒性 / immunometabolism / 糖尿病 |
Outline of Annual Research Achievements |
糖尿病の病態において、高血糖がインスリン分泌低下や抵抗性を惹起する「高血糖毒性」という概念が知られている。しかしその分子基盤は未解明の点が多い。一方で、代謝と免疫系との多面的相互作用が近年報告されている背景を踏まえて、申請者は高血糖により免疫系が影響を受ける(免疫系の高血糖毒性)という仮説を立てた。本研究では免疫系細胞の高血糖毒性を検証するために、糖尿病入院症例から高血糖治療前後のタイミングで末梢血単核球を採取し、トランスクリプトームや代謝の変化を解明することを目的とし、本研究を計画した。 2019年度は、倫理委員会で承認された計画書に沿って、同意が得られた糖尿病入院症例から、ほぼ目標数の末梢血単核球細胞を単離することができた。単核球は著明な高血糖による入院時、及び治療後の血糖正常化後の2点において採取した。一部の細胞を用いてトランスクリプトーム解析を行い、糖代謝あるいはエピジェネティック修飾に関連する複数の遺伝子が高血糖治療前後で有意に変動することを新たに見出だした。さらに一部の細胞を用いてメタボローム解析を行っている段階である。また臨床情報としても、対象症例の入院中の生化学的データ(血糖値、ケトン体分画、脂肪酸分画、高感度CRP、インスリンやグルカゴン等)、体組成(体脂肪量、筋肉量など)、細小血管合併症の状態、動脈硬化指標(頚動脈IMTやABIなど)等が蓄積し、これらと遺伝子発現プロファイルとの相関関係を解析中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は、初年度に糖尿病入院症例から高血糖治療前及び治療後に免疫細胞を単離し、高血糖による免疫細胞の形質変化を網羅的に明らかにする事を目標とした。初年度に、同意が得られた糖尿病入院症例35症例から末梢血単核球を単離した。これらの一部を用いてトランスクリプトーム解析やパスウェイ解析等を行った。さらに臨床情報の蓄積も予定通り順調に進行した。今後、蓄積したサンプルやデータを用いて、発現変動する遺伝子の細胞生物学的意義の解析や、高血糖状態の細胞のメタボローム解析を行い、これらと糖尿病臨床指標との相関関係を解析していく予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
初年度に着目した免疫系の高血糖毒性による変化に関して、細胞生物学的解析、並びに糖尿病病態における臨床的意義付けを行っていく。前者として、初年度において高血糖により発現変動することを見出だした遺伝子に着目し、細胞生物学的実験を行ってその生物学的、病態的意義を明らかにする。また単離した末梢血単核球を用いたメタボローム解析を行い、高血糖毒性による免疫細胞の代謝変化を明らかにする。後者については、高血糖状態における末梢血単核球の遺伝子発現パターンと、詳細な臨床データとの相関解析を行う。具体的には、入院中の生化学的データ(血糖値、ケトン体分画、脂肪酸分画、高感度CRP、インスリンやグルカゴン等)、体組成(体脂肪量、筋肉量など)、細小血管合併症の状態、動脈硬化指標(頚動脈IMTやABIなど)等が蓄積されているため、これらと遺伝子発現パターンとの相関関係を網羅的に解析する。以上の解析を通じて、糖尿病病態の可逆性を予測しうる新規のバイオマーカー同定も目指す。
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Causes of Carryover |
初年度に末梢血単核球の単離、臨床データの蓄積に要した費用が予定よりも少なかったことに加え、次年度にメタボローム解析や一部のトランスクリプトーム解析、着目した変動遺伝子の機能的解析を行うために必要な追加費用が生じたため、次年度使用額として計上した。
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