2019 Fiscal Year Research-status Report
習慣的朝食欠食者が目標とすべき朝食へのエネルギー配分率下限値に関する検討
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19K20190
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Research Institution | Shukutoku University |
Principal Investigator |
雀部 沙絵 淑徳大学, 看護栄養学部, 助教 (00614364)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 朝食欠食 / 朝食エネルギー摂取量 / 身体活動量 |
Outline of Annual Research Achievements |
若年層に多い朝食欠食者に対し、栄養教育介入のための根拠を得ることを目的に、朝食として摂取すべきエネルギー量の下限値について検討している。初年度は、20代の男女20名を対象として1週間の食事内容、身体活動量、生活習慣、身体計測値に関する横断的調査を実施した。 午前10時までのエネルギー摂取量が0 kcalの日を朝食欠食日とし、それ以上の日を朝食喫食日とした場合、朝食欠食日では、立位以上の強度で活動したアクティブ時間、1日の歩数が朝食喫食日に比し有意に少なく、安静時間が長いことが明らかとなった。栄養摂取に関しては、両日の1日エネルギー摂取量に有意差を認めなかったものの、朝食欠食日では朝食喫食日に比べて夕食の脂質摂取量が高く、間食のエネルギー摂取量、たんぱく質摂取量が高いことが明らかとなった。 さらに朝食喫食日のうち、朝食エネルギー摂取量が240 kcalより高い/低い日に分け、それぞれを朝食欠食日と比較すると、両日ともアクティブ時間、歩数が有意に多く、安静時間が有意に短かったことから、朝食のエネルギー摂取が少量の場合でも、喫食により身体活動量を高められる可能性が示唆された。一方、朝食エネルギー摂取量が160 kcalを基準に分けると、低い日と朝食欠食日の有意差が消失したことから、身体活動量を高める朝食エネルギー摂取量の下限値は160-240 kcalの範囲にあることが予想された。 興味深いことに、各日の朝食エネルギー摂取量とアクティブ時間および歩数との関係には有意な正相関が認められ、直線よりも上に凸の二次関数でよく相関した。朝食エネルギー摂取量と安静時間は下に凸の二次関数で相関した。すなわち、身体活動量を高める朝食エネルギー摂取量には最適な範囲があり、朝食エネルギー摂取量の不足だけでなく、過剰でも身体活動量が低下する可能性が新たに示唆されたことは、今年度の重要な知見である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
対象人数が予定より若干少数であったため、調査日ごとの解析を行った結果、朝食欠食日では朝食喫食日に比べてアクティブ時間、歩数が有意に少なく、朝食欠食と身体活動量の関連が確認された。身体活動量を高める朝食エネルギー摂取量の下限値に関して、160-240 kcalの範囲と予測ができた。さらに、朝食エネルギー摂取量とアクティブ時間および歩数との関係が上に凸の二次関数で相関したことから、次年度の介入研究に向けて朝食エネルギー摂取量の下限値だけでなく上限値についても検討の必要性を示唆する、予想以上の結果を得た。二次関数から求めたアクティブ時間が最大値となる朝食エネルギー摂取量は538 kcalで、1日量に占める割合は34.1 %であった。この結果は、朝食の望ましいエネルギー配分率の範囲を決める根拠の一つとなり得る。 若年者の朝食内容について、菓子類を摂取した日が22 %を占めた。朝食では毎日同じ食事や食品を摂取している者が複数名おり、昼食・夕食では見られない特徴であった。朝食欠食の理由は、時間や食欲がないことであった。最終年度の栄養教育介入に向け、これらの特徴を踏まえた改善案を検討していく。 若年者を対象とした先行研究をもとに、朝食欠食時の1日エネルギー摂取量が朝食喫食時よりも少なく、習慣的朝食欠食が若年女性のやせにつながる原因の一つと考えた。今年度、朝食喫食回数が週5日以上の者を習慣的朝食喫食者、週2日以下の者を習慣的朝食欠食者とし、両群の1日平均エネルギー摂取量、BMI、体組成を比較したが、有意差は認められなかった。対象人数が少数であった、男女差が反映された可能性が理由と考えられる。朝食欠食および朝食エネルギー摂取量と体組成との関係については、対象人数を増やし、次年度以降も検討を継続すべき課題である。 以上より、次年度以降の研究を進める基礎となる成果が得られたと考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
2020年度は計画通り、朝食として摂取すべきエネルギー量および1日に摂取するエネルギー全量のうち最低限何%以上であることが望ましいか、その下限値を検討するため、朝食のエネルギー摂取量を指定した介入研究を実施する予定である。 しかし、当初の計画では、朝食提供を行ったり、対面で食事内容の聞き取りをしたり、身体計測のため対象者に直接触れることが必要であったが、新型コロナウイルスの流行により感染防止策を講ずることが不可避となった。したがって2020年度は研究方法を一部変更して実施する。具体的には、オンラインツールの活用、レトルト・冷凍食品の利用、調査機器や質問紙の郵送、対面調査時における感染防護具の着用などである。これらの変更に伴い、2020年度は当初必要経費として計上していなかった郵送費、消耗品費の増額が見込まれるが、2019年度未使用予算を充てることで対応可能と考えられる。また、感染症対策継続期間中の研究遂行に伴い、対象者の生活行動が常時とは異なるなど、研究データへ影響を与える可能性が考えられる。しかし今年度は介入研究であり、研究対象者間の属性や調査期間を可能な限り近づけることにより、概ね予定通り朝食エネルギー摂取量と身体活動量の関係について検討することが可能であると予想している。
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Causes of Carryover |
当初の計画では、初年度に設備備品として調査データを保存・管理するためのノートパソコンを購入予定であったが、研究開始後に同所属の研究者からの譲渡を受けることとなり、購入不要となった。活動量計に関しては、購入を予定していたV-800モデルの販売が終了となった。後継機であるPOLAR VANTAGE Vモデルを検討したが、より高額であること、事前検討において対象者から胸部心拍センサーの長時間装着による不快感等が報告されたことから、データ収集に必要な機能を搭載し、より安価なA370モデルを購入することとした。予定していた学会参加費および旅費は、新型コロナウイルスの影響により学会が中止または誌面開催となった。以上の理由より、2019年度の使用額が予定額を下回った。 しかし、今後の研究の推進方策にも記載の通り、2020年度は感染症対策のため研究方法の変更を余儀なくされ、当初計上していなかった消耗品購入費、郵送費等の増額が見込まれるため、2019年度の差額分をこれに充填する予定である。
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