2020 Fiscal Year Research-status Report
習慣的朝食欠食者が目標とすべき朝食へのエネルギー配分率下限値に関する検討
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19K20190
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Research Institution | Shukutoku University |
Principal Investigator |
雀部 沙絵 淑徳大学, 看護栄養学部, 助教 (00614364)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 朝食欠食 / 朝食エネルギー摂取量 / 身体活動量 |
Outline of Annual Research Achievements |
2020年度は、エネルギー摂取量を指定し朝食を提供した場合の身体活動量について介入研究を実施した。対象者は20代女性12名で、エネルギー摂取量を0 kcalから120 kcal刻みで設定し事前に提供した朝食を午前7時から8時の間に喫食してもらい、昼食、夕食、間食は自由摂取とした。昨年度の結果で、朝食エネルギー摂取量の過剰でも身体活動量が低下する可能性が示されたことから、朝食エネルギー摂取量の最大値を720 kcalに設定した。 朝食エネルギー摂取量が0 kcal(朝食欠食日)、120-240 kcal、360-480 kcal、600-720 kcalの4群に分けて比較すると、1日の安静時間は、朝食欠食日および120-240 kcal摂取日に比べ、360-480 kcalおよび600-720 kcal摂取日で有意に短かった。朝食欠食日と比較して120-240 kcal摂取日の安静時間は有意差を認めなかったのに対し、360-480 kcal摂取日は朝食欠食日および120-240 kcal摂取日と比較した場合にいずれも有意に短かったことから、身体活動量を低下させないための朝食エネルギー摂取量の下限値は、昨年度の予想よりも高い240 kcalから360 kcalの間にある可能性が考えられた。また、昨年度の横断研究における朝食喫食日の朝食エネルギー摂取量平均値は374 kcalであったが、その約2倍の720 kcalを朝食で摂取しても、身体活動量の低下を認めなかった。したがって、最適な朝食エネルギー摂取量の範囲の上限値が、身体活動レベルが普通程度の20代女性の推定エネルギー必要量である2000 kcal/dayの35 %を上回る可能性を示唆している。 以上より、朝食エネルギー摂取量の最適な範囲および欠食者が目指すべき下限値の決定に向け、次年度の計画につながる重要な知見が得られた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
2020年度の成果として、朝食欠食者が目指すべき朝食エネルギー摂取量の下限値として240-360 kcalの範囲に焦点を当てることができた。加えて、朝食エネルギー摂取量の最適な範囲の上限値が1日のエネルギー摂取量の35 %を上回る可能性が示唆された。次年度に詳細な検討が必要と考えられるのは次の2点である。1つ目に、有意ではなかったものの朝食エネルギー摂取量の増加に伴い午前中の体温が上昇する傾向が認められたことである。2つ目に、視覚的スケールにより評価した昼食前の食欲レベルは朝食喫食日に比べて朝食欠食日で有意に高い値であるにも関わらず、朝食欠食日の昼食エネルギー摂取量は増加せず、むしろ1日のエネルギー摂取量は身体活動レベルが普通程度の20代女性の推定エネルギー必要量である2000 kcal/dayを大幅に下回っていたことである。2020年度は朝食喫食習慣のある者に対する介入であったため、2021年度は本研究の最終ターゲットである朝食欠食習慣のある者を対象にして、エネルギー摂取量を指定した朝食摂取を促す栄養教育により、身体活動量低下、午前中の体温上昇抑制、1日のエネルギー摂取量不足という問題を解決できるか否か、検討する必要がある。 進捗に若干の遅れが生じた理由は2つ挙げられる。1つ目は、感染症対策のため2020年度の研究対象者に身体計測を実施することが困難であり、身体的特性について2019年度の研究対象者と比較ができなかったことである。2つ目は、研究対象者の生活習慣を質問紙で調査したが、研究代表者の産前産後・育児休業に伴い研究を約5ヶ月間中断することとなり、解析に使用するためのデータ入力が遅れていることである。2021年度は、前述のデータ入力と解析を進めるとともに、朝食エネルギー摂取量の幅を絞り込み、研究対象者の身体計測を実施して、介入研究を行う予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
2020年度の研究成果を踏まえ、2021年度は、朝食エネルギー摂取量が0 kcalの日が週5日以上ある習慣朝食欠食者に対して、栄養指導介入を実施する。目標とする朝食エネルギー摂取量を240 kcalから360 kcalの範囲(身体活動レベルが普通程度の20代女性の推定エネルギー必要量である2000 kcal/dayの12 %から18 %の範囲)で設定し、具体的な朝食内容の提案を含めて4週間の指導を継続する。朝食内容の提案にあたっては、昨年度の研究で明らかになった若年者の朝食内容の特徴、朝食欠食の理由として最も多く挙げられた時間がないことを踏まえ、短時間での準備や喫食が可能で安価な朝食内容の例を考案し、調査開始時に数日間の朝食提供を実施する予定である。 習慣朝食欠食者に対してエネルギー摂取量を指定した具体的な朝食喫食指導を行うことにより、欠食習慣の改善は見られるのかを検証する。また、栄養指導介入中に対象者が実際に摂取した朝食エネルギー摂取量と身体活動量、1日のエネルギー摂取量、午前中の体温上昇との関係について検討を行う。栄養指導介入の前後で、朝食エネルギー摂取量、1日のエネルギー摂取量、身体活動量、午前中の体温上昇について比較を行い、朝食喫食の効果がみられるかを検討する。
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Causes of Carryover |
2020年度は、介入研究で使用する予定であった試験朝食の内容を、感染症対策のため長期保存・郵送可能なレトルト食品などを利用した簡易なものに変更したため、試験朝食の試作にかかる費用が不要となった。また、研究代表者の産前産後・育児休業取得に伴い、約5ヶ月間の研究中断期間が生じたことから、論文執筆・投稿準備のため使用予定であった英文校閲費用が未使用となった。参加・発表を予定していた学会が、感染症対策のため中止やオンライン開催となったことから、参加費が減額となり、旅費が未使用となった。以上の理由より、2020年度の使用額が予定額を下回った。 2021年度は研究を再開し、上記の未使用額を使用して国際学会での発表、論文執筆・投稿準備を進めていく予定である。また、昨年度得られたデータの入力、資料整理、英文校正を依頼し、その役務に対して謝金を支出する予定である。引き続き感染症対策を継続して研究を実施するため、消耗品費、郵送費等の支出増額が見込まれ、未使用額を充填する予定である。感染状況が沈静化した場合は、学会参加に必要な旅費を支出する予定である。
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