2019 Fiscal Year Research-status Report
腸内細菌叢を介した報酬系摂食調節に有効な食物繊維処方の開発
Project/Area Number |
19K20207
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Research Institution | Toyo University |
Principal Investigator |
小西 可奈 東洋大学, 食環境科学部, 助教 (40822185)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 食行動 / 脳報酬系 / 腸内細菌 / 食物繊維 / 短鎖脂肪酸 |
Outline of Annual Research Achievements |
ヒトの摂食行動は、視床下部がその中心を担う恒常的摂食調節系と、認知・実行機能や情動を司る前頭前野や大脳辺縁系等ドーパミン神経系が担う報酬系による調節を受けて成りたっており、体重が増加しやすい者の摂食行動は報酬系の寄与を強く受ける。これまでに、摂食調節機構の正常化に寄与する栄養素として、食物繊維が肥満者の食欲を抑制し体重を減少させることが明らかにされているが、全てのヒトの摂食調節に有効であるかは未だ議論がなされている。動物実験では、腸管で産生された短鎖脂肪酸(酢酸、プロピオン酸、酪酸など)が液性・神経性経路を介して種々の摂食調節関連因子を制御し、摂食行動の発現に作用することが示されており、ヒトにおける食物繊維の摂食調節作用にも短鎖脂肪酸が強く寄与している可能性がある。そこで、本研究では、食物繊維、腸内細菌、短鎖脂肪酸と摂食調節、特に脳報酬系による調節機能との関連を明らかにする。さらに、肥満者・非肥満者それぞれの摂食行動調節に有効な食物繊維処方を検討する。 2019年度は、過去1年間で体重が増加した者と増加しなかった者において、習慣的な食物繊維摂取量と便中短鎖脂肪酸濃度、腸内細菌、食行動の関連を横断的に検討した。報酬系が寄与する食行動は、Three-Factor Eating Questionnaireを用い、Uncontrolled Eating尺度の得点によって評価した(値が高いほど悪い食行動が多いことを示す)。その結果、体重増加群は非増加群に比べて、便中酪酸濃度が有意に低く、Uncontrolled Eatingの得点が高いことが明らかになった。さらに、便中酪酸濃度と習慣的な食物繊維摂取量との間に正の関連が認められ、それらの関係にいくつかの腸内細菌が介在している可能性が示された。この結果をもとに、次年度の実験で用いる素材を決定し、論文執筆を進める。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
予備検討を計画通り遂行し、次年度の研究に活用する知見を得た。
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Strategy for Future Research Activity |
2019年度に行った検討で得た知見に基づき、異なる食物繊維(種類・量)の摂取が肥満者・非肥満者の短鎖脂肪酸濃度及び摂食行動に与える一過性及び長期的な効果を検討する。
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Causes of Carryover |
短鎖脂肪酸濃度の分析に係る費用を本研究費で支出予定であったが、見積と差額が生じたため次年度使用額が生じた。研究課題1で行う分析項目数を増加させる予定であり、その費用として使用する。
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Research Products
(1 results)